■黒田硫黄『大金星』。短編集。
6話続く『ミシ』で大笑い。アパートの隣の部屋に、愛嬌のある怪物げなものが住んでる藤子不二雄的なシチュエーション。何がおもろいのかわからんし、もしかしたら他の人はそんなには可笑しくないのかもしれんが、久々にマンガで凄い笑った。
この人のマンガは、時間の一部を切り取ったような感じがある。マンガの前にも時間があるし、マンガのあとにも時間がある。あちこちで、ずっと続く世界の中の、たまたまこの場所、この時間にカメラが入ったような。
関連して、人の縁が濃くない。普通、話というのは濃い縁で織るものだと思うが、黒田硫黄の場合、深まらない縁は深まらない。たまたま糸が交わった箇所、結び目ほど固くない瘤みたいなものを取り出して話にしてる感じがする。風通しがいいと言うか、空気が抜けると言うか。これで話としてちゃんと面白いのが不思議。まあ、そういうのばっかでもないし、誇張して言ってますけど。
こないだから、テーマドリブンとか意志ドリブンとか言ってるが、強力なエンジン1基で目標に向けて真っ直ぐ駆動するような作品って面白くなりにくいと思う。そういう暑苦しさに対して、外から風が入ってきたり、粘ったり佇んだり跳ねたりバラけたりする作品は、ガツンと来にくい一方で、覗き込む方向がいっぱいあって楽しい。その方がリアルだし、不出来があっても愛せる。