カルメン・ミランダ

久保田麻琴『世界の音を訪ねる—音の錬金術師の旅日記』面白かった。インタビューの中で、細野さんはカルメン・ミランダが好きだった、って話が出てきた。

 夕焼け楽団の最初のスタイルは、さっきもいいましたが、基本的なアメリカン・ルーツ・ミュージックを電気化したものだった。それがたぶん、自分なりに作った一つの答えだったんです。でも作りながら、それにアルバムを出してしまった後も、なんだか自分では好きじゃないんですよ。なにか居心地が悪い。
 
 その頃、細野さんもつくりながら居心地の悪さを感じていたようです。
 
 その頃「さて、これからどうしよう」というような話題は、いろんな場面で出ていたんです。それで、「ハワイが面白かった」とか「沖縄がすごかった」なんていう話から、私のほうはハワイ+チャンプルーっていう、いかにも短絡的な(笑)アイディアが浮かんだ。
 細野さんのほうは、ブラジルのサンバ歌手でハリウッド・スターのカルメン・ミランダとか、四〇年代の歌手で女優のドロシー・ラムーアのエキゾチックな役柄とかが、好きだったんですよ。<略>それで私が、「細野さんはトロピカル・ダンディだよね」といったら、それが彼のアルバムタイトルになった。

 カルメン・ミランダはブラジルのスターで、’40年代アメリカで活躍した。一時はアメリカで一番稼いだ女性だったそうだ。
バナナトーク:ミス・チキータの謎
YouTube – Carmen Miranda
ミュージカル・ムービー・ワンダーランド:ブラジルから来た爆弾娘
ブラジル・サンパウロから世界へ、そして渋谷:”ブラジル人”スター、カルメン・ミランダの回顧展
カルメン・ミランダ:バナナが商売
 コメディエンヌの唄は評価されにくい上に、ブラジルを捨てアメリカに渡って、ベタな南国イメージを売りにし、成功しちゃったもんだから、良く思ってない人もいるらしい。前に引用したカエターノの文章に出てくる「バナナを吊したターバンの連想」ってのはカルメン・ミランダのことも含んでるんだろう。
 もっとも、カエターノはバナナに特別な因縁があるらしい。フリーペーパー『MPB』の今の号に面白い話が載ってる。

 「ボサノバ」が画期的新製品というニュアンスで工業製品の名前に使われたのと同様、トロピカリアもマスコミが煽りTV番組がヴィジュアルを日夜大量に流し、産業界が「最新流行」に便乗してから急激にその勢力を広げたのである。ジルやカエターノたちは押し寄せる波に囲まれ、気が付けばその頂上でサーフィンをしていたようなものだ。
 
 世間は彼らをトロピカリスタと呼び、否応もナシにバナナというシンボルをくれた。<略>68年4月9日のTV特集バナナナイトでは、もはや完全に腹をくくったカエターノがバナナプリントの衣装で出演し「Yes、バナナあります」を歌った。街角ではバナナを無料配布、仰向けで足を高く上げるバナナの木のポーズ(以後カエターノがステージでよく演じた)のコンテストなど盛り上がるのなら何でもあり。

 本人の意図とは別に、新たな流行としてマーケティング主導でトロピカリアが盛り上がり、バナナの木のマネまでやるはめになって、その後逮捕されて亡命、ロンドンで鬱々としてすごしたカエターノ……。
 話がズレたが、中村とうようがカルメン・ミランダを絶賛していて前から気になってた。細野ファンとしても聴いてみたい。つーことで中村とうようが自分ちで出したオーディブックの『ベスト・オヴ・カルメン・ミランダ』を中古で買ってみた。「BMG盤のCDとは曲はダブりません」と謳ってるが、そのBMG盤も廃盤で難儀。
 なんせ’30年代の曲がほとんどだから素直に耳に入ってこない。圧倒的だという歌唱力も、耳ができてないんでピンと来なかったり。まあ、じっくり聴いていこう。『チャタヌガ・チュー・チュー』は細野さんのとアレンジも似てる。原曲はグレン・ミラーだが、細野さんのはカルメン・ミランダのカバーだ。
 エキゾチックを望むなら’40年以降の方なんだろう。iTMSにもある
 映画も見てみたいがDVDになってないみたいだな。版権切れてるし500円ので出てくれればいいのに。

コメントを残す