森下裕美『大阪ハムレット』

大阪ハムレット 1 (1)森下裕美『大阪ハムレット』1巻読んだ。圧倒的。敵わないなと思った。1話目に出てくる、バカで乱暴で思いやりがあるヤンキーの、キャラと環境のリアル。
 この小っこいリアルには、理屈もフィクションも敵わない。いや、このマンガもフィクションなんだけど。
 そんで、もの凄くストレートに「お話」だ。
 話を成り立たせるには、何か起きなきゃいけない。フィクションだからやろうと思えばどこまでもデカい話にできる。全宇宙を巻き込む光と闇の最終決戦とか。けどリアリティがなければ何も起きてないより酷い話になる。一方で実際大したことが起きない日常を、淡々と綴るものもあったりする。副次的な要素、今っぽいとか、パンツが見えるとか、ウンチクが身に付くとかで成り立たせる場合もある。
 このマンガは、お話として非常にオーソドックスだ。スケールの小さい日常の話ではあるけども、話として成立するだけの何かが起きてる。なんて当たり前っちゃ当たり前なんだけど、一話一話濃厚にしっかりできてる。しかも人情にもシニカルにも寄らず、色も主張も感じない。ただ、お話だけがある。現実(に似たもの)だけが目の前で展開する。
 話、話つってるけど絵も魅力的。同じストーリーで別の人が描いたら全然別のものになるはず。
 それにしても森下裕美がこんな境地にまで行ってしまうとは思わんかった。なんか偉そーな言い方になっちゃってアレなんだけど、ドラマ作りに関しては、柏木ハルコは他の人と違うレベルにあると思うんだけど、森下裕美は同等かそれ以上だなあと思った。

2 thoughts on “森下裕美『大阪ハムレット』

  1. 「大阪ハムレット」(森下裕美)

    大阪が舞台の短編マンガであります。全編コテコテな関西弁で、さらっと日常が書かれてるのであります。大ネタがあるわけでもなく、爆笑ギャグが仕込まれてるわけでもなく、…

  2. まさしくハムレットだなと思いました。
    舞台は大阪でも、登場人物は王子でもなんでもない
    普通の人でも、この喜劇、悲劇はハムレットの
    はげしさだと思います。

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