土人との戦争

 別に夏だからというわけでもなく、ここんとこ戦争映画を観てる。
 ベトナム戦争ものを観ると、ベトナム人が土人っぽい。日本人の俺にとって映画のスタンダードはハリウッド映画だ。格好良くて文化的で英語をしゃべる白人がスタンダード。格好悪くて文化的に遅れてるふうで知らない言葉をしゃべるベトナム人はノン・スタンダード。
 『フルメタル・ジャケット』でベトナム人と「話す」シーンは、ポン引きとの交渉と、ラストの虫みたいになったスナイパーの嘆願を聞くとこくらい。アメリカは言葉が通じない土人と戦っていた。俺はアメリカ人の視点で、自分に似た顔のベトナム人を土人として見る。
 アメリカの映画で日本語が出てくるとする。俺は日本人だから何言ってるかわかるが、本国では字幕が出てないことがある。観客にも登場人物にも、日本人が何言ってるかわからない。わからなくていいノイズ。それと同様のわからなさをアメリカ人と共有しながら俺はベトナム人を見てる。
 戦争となると、敵と言葉が通じないことは普通なんだが、普段SF見てるとわかんない。ジオンともガミラスとも言葉は通じる。ハリウッド映画をアメリカ人の視点で観てるとやっぱりわかんない。
 じゃあアメリカ人にとって、旧日本兵はどんなふうに土人だったのか。『パール・ハーバー』観たら、土人扱いは免れてるふうだった。日本の描写がおかしいと言われてたようだが、映画的に格好良く描かれてると思った。この映画はSFだから面白いっちゃー面白かったが、いろいろ不満足。
 『シン・レッド・ライン』は凄えつまんなくて途中で投げたが、日本人が土人として描かれてたんで満足感があった。「アメリカ人にとって日本人は絶対土人だったはず」が証明されて納得した。
 日本の陣地に突入した米兵が「臭い」と言って鼻にタバコを詰める。直接的に臭いのは死体の匂いなんだが、意味するとこは不衛生な土人に対する生理的・根本的な拒絶だろう。戦争の虚しさを文学的に綴る辛気くさい話の中で、日本人は尊厳なくぽんぽん死ぬし、意味不明の言葉を発するし、半裸だし、臭い。現地人より人間扱いされてない。
 関係ないけどレノアのCMで「特に主人の」枕カバーが臭いと糾弾されたにとどまらず、ファブリーズ対抗商品のリセッシュでは「ウチの男が臭い」と息子さんまでもがデオドラントの対象になってる。そのうち「シュッとひと吹き」で臭いの元である男を消し去る製品が出るんじゃないか。
 今日観た『鬼が来た!』は凄くオモロかった。終戦直前の中国の農村が舞台。レジスタンスと思われる謎の人間がふたつの麻袋を中国人の家に置いていく。ひとつには日本兵が、もうひとつには日本に従軍してた中国人翻訳者が入っている。日本語は中国人に通じない。通訳はウソばっかり言う。
 日本軍と中国の農民、どちらが土人かと言えば、中国人の方が土人っぽい。中国映画だから、土人の側の視点で土人を描いてる。
 謎なラストに関してはこれ見て納得。

エイリアン・エイリアン2

 2本で2079円。
 かなり悩んだ。「おお! エイリアン2が1000円で買えるのか!」と思いつつ、手に取ったり棚に戻したり繰り返したあげく買わずに帰った。別の日にまた悩んでようやく買った。レンタル1回300円として、4回見れば得したことなる。けどラインナップの中で確実に4回観る作品がエイリアン2しかなかった。もう1本に迷って、結局エイリアンにした。
 1作目は今観るとたるいなあ。「見えない恐怖」って2回目以降は通用しないしなあ。あと3回、観たくなるかなあ。『X-MEN』にすれば良かったかなあ。X-MENにはおっぱいがあるもんなあ。
 2はやっぱりオモロいな。当時は、作品としての深みとかじゃなくてただただ派手ってのに喜んだんだが、今観るとちゃんとしてるな。ニュート可愛いな。
 組織に忠実であるがゆえに悪者ってパターン、SFでは多い気がするけど、昔からあるのかな。国とか大企業とかが悪いことをたくらんでるって前提が。
 1の終わりの方でリプリーがネコ探しに行く。それまで合理的に動いてたのに、急に非合理なことをする。これはベタな解釈だと母性なのかもしれんし、内田樹はプッシー(キャット)だと言ってた。別の生き残りは冷却用のボンベを探してて、ボンベはちんこだと。
 1で組織に忠実な悪者は、端的に非人間のロボットだったわけだけど、リプリーが見つけたのは(これまたベタに)人間性で、ボンベは実用品ってことはないのかな(結局ボンベなしで脱出用のシャトルは飛ぶんだけど)。うあー、人間性とか言っちゃったな。ヒューマニズムじゃなくて、なんていうか機能性とかに関わることなんだけどうまく言えん。なんか別の映画観てるときもこういうこと考えてたんだよな。機能的になるのと、感情的になるの。どっちも度が過ぎるとダメで、死んじゃったりする。

『キューティーハニー』庵野秀明・’04

 サトエリ素晴らしい! 市川実日子もよかった。アギトの藤田瞳子っぽい。まあ、それだけで良し、という感じで……。
 冒頭「これは面白いのでは!」と思ったのに、進むにつれ醒めていくのな。とは言え、邦画じゃこれ以上を望むのは難しいんだろうなあ。
 昔のアニメは大人が子ども向けに作ってて、ハニーなんか脱ぐし、バックは意味不明のサイケ模様だし、BGMはダバダバだし。ポリマーとかも大人のセンスで作ってた。大人の作り手がなんかしら持ち込んできてた。で、今見てもかっこいい。実写ハニーを作るならバーバレラとか、最近だとオースティン・パワーズとか、その辺の路線でやってほしかったんだけど、若者向け深夜番組のセンスでとどまってるのが惜しい。
 あと、戦闘シーンでちょびっと服が裂けるだけ、ってのはハニー的にどうかと。冒頭のお風呂→下着で疾走がやれるなら、アクションの中でもうちょっとお色気出せたはずで、それがあるのとないのとでは永井豪作品っぽさがだいぶ違うと思うんだよなあ。
 スター・ウォーズ エピソード2でアミダラ様がヘソをお出しになるじゃないですか。最初、フィギュアで知って、「おお、今度のアミダラはヘソを出すのか」と期待しつつ映画見たら、あれ、もともとそういう服なんじゃなくて、破れてああなるのな。フィギュアじゃ細部までわからなかった。同じヘソ出しでも、もともと出てるのと、破れて出るんじゃ全然意味が違うんすよ。破れた瞬間、「わかってるなあ」と思ったよ。そういうことなんですよ。