■池松江美『男性不信』
主人公は“虫酸ラン子”、オビには「辛酸なめ子の半自伝的小説」とある。生い立ちやら過去のセクハラ体験やら、生々しいようで、すっとぼけていて、肩すかし感もあり。
同世代にはモテないが、おっさんには大人しく純情で言うこと聞きそうに見られてモテるそうだ。俺はおっさんでありアイドルとしてのなめ子さんのファンだが、そんな風には見てないなあ。まあ、おっさんの時点でダメなんだが。
■今井和也『中学生の満州敗戦日記』(岩波ジュニア新書)、松原一枝『幻の大連』(新潮新書)。
満州回顧もの新書。広告業界人がジュニア向けに書いたものと、作家が一般向けに書いたもの。結構テイストが違う。単純に比べられんが、『幻の大連』の方がおもろかった。
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Muxtape
■オリジナルテープを編集して人に無理くり聴かせてキモがられたりがウェブで簡単にできるMuxtape。今んとこMP3のみで、m4aとかはダメなのと、重くて繋がらないことがあるのは要注意だが、あとは説明いらず。
んで、作ってみた。40分だけ付き合ってくれたまえ。バックグラウンドで鳴らしといてくれたまえ。みんなもブラジル音楽を聴けばいいじゃない!
■山本 弘『“環境問題のウソ”のウソ』飛ばし読み。買わずに立ち読みで済ませばよかった。『環境問題のウソ』(俺は読んでない)がいい加減だということはわかったが、くどくどくどくど重箱の隅をつつくような文章が厭らしくて不快。まるで2ちゃんでやってる議論のための議論。表紙も酷いね。
■ハニー THE LIVEはよかったですね。原幹恵が意外とハマリ役だった。水崎綾女はこれでファンになった。
辛酸なめ子が出てた『くちこみジョニー!』も終わったし、今期のスゥーパァ〜〜ヒィロォタァイムは脱落しましたので『やりすぎコージー』以外もう見るものないな。福満しげゆきの原作も使う『週刊 真木よう子』は見てみようかな。
『自分探しが止まらない』
■速水健朗『自分探しが止まらない』読んだ。
肯定的にせよ否定的にせよ、自分探しに興味がある人にはいい本だなと思った。
扱う範囲が広くて面白かったけど、読み進めるうちに、要点を箇条書きでまとめるとあっさりしたものになるなと思った。箇条書きの裏付けとして文章量がいるわけだが、あらかじめ自分探しに距離を置いてると、そこまで丁寧じゃなくてもわかるというか。
現状とそれに至る過程がさっくりきっちりまとまってて、新書だからこれで正しいんだろうけど、ちょっともの足りなさもある。
「著者はマスコミ関係じゃん」ってのが、読んでてずっと気になってた。これに関してはあとがきで納得。著者がモロに自分探し世代なら、個人的な話をもっとしてほしかったと思うのは俺だけなのかな。
そういえば前に響鬼の感想でこんなの書いた。“30話以降”というのはこれのこと。もっちーがボランティア始めちゃってうんざりしたのも30話以降だったなあ。
■特撮ついでに、今週のハニー The Liveはよかったっすね。
ゴーオンジャーは「産・業・革命〜!」に笑ったけど、ノリが合わないので見なくなりそう。
安原製作所回顧録
■安原 伸『安原製作所回顧録』読んだ。
’97年から’04年まで存在した、世界最小のカメラメーカー、安原製作所の回顧録。特異な成り立ちは面白いし、フィルムカメラ終焉の記録にもなってる。
安原製作所の1号機・安原一式が発表された’98年は、何年も続いた中古カメラブームのただ中だった。フィルムカメラの進歩は行くとこまで行っちゃって、最新一眼レフは合理的だけど、気分的にはレンジファインダーもいいよねみたいな懐古があった。リコーGRなどの高級コンパクトのレンズがLマウント(旧式ライカのレンズマウント)で発売されたり、安価なロシア製ライカコピーが面白がられたりしてた。
安原一式はLマウントの実用機として登場した。金属製機械式レンジファインダーカメラ。メインストリームから見れば完全に時代に逆行しているが、趣味的にはトレンドを捉えていた。赤瀬川さんは「新品の中古カメラ」と呼んだ。35ミリレンジファインダーは高価なライカしかなかったが、安原一式なら5万5000円。ライカレンズを付ければ、写りはライカと同じ。クラシックカメラは安いのもあるけど、リスクがある。一式は新品が手に入り、メーカーサポートも受けられる。TTL測光の露出計も付いてる。機械式カメラを新規に日本で作ると高くなるが、製造を中国の工場に依頼することで安くした。今ならありそうな話だが、’98年の時点でこんなことする人はいなかった。一人で設計、開発過程はホームページ上で発表。店頭には置かず直販のみ。ネーミングも妙だし、何かと珍しかった。
後にコシナがベッサシリーズでこのジャンルに参入してくる。大きなメーカーがライバルとなるとキツい。サイトにコシナに対する文句が書いてあることもあった。
一式のユーザーだったんで、個人的回顧を。上の写真は届いた日に撮ったもの。ゆうパックの箱が元箱。
’97年末にサイバーショット初代機、DSC-F1を買った。カメラには興味がなかったけど、電子機器としてのデジカメは面白かった。けど、新製品のカタログ見ても、電子部分はわかるがカメラ部分のスペックが理解できない。そもそも絞りとシャッタースピードの関係すら知らない。基本を知らないまま、どんどん便利になっちゃっていいのか?
とか思ってたときに、たまたま読んだ赤瀬川原平『ちょっと触っていいですか―中古カメラのススメ』で古いカメラに興味を持った。今後デジタルに移行するだろうから、電子化が進んだフィルムカメラは中途半端な存在に思えた。どうせ買うならマニュアルフォーカスの方が魅力的。
当時はまだニコンF3などのフラッグシップと、FM2などの普及機が新品で買えたけど、ロングセラーで生き残ってるだけ。俺の世代のカメラじゃない。欲しい種類のカメラは、もう新製品が出ない。
そう思ってたのに出ちゃった一式は魅力的だった。受付開始後すぐに予約して、’99年6月にようやく届いた。
中国製だけあって、作りは雑だった。表面の梨地の荒さがボディーの左右で違ってた。セルフタイマーが真っ直ぐ上を向かなかった。シャッターの具合がおかしくなって1度修理に出した。その後も快調とは言えなかった。ライカではファインダーの見えの良さが語られるが、一式のはレンズシャッターの普及機と同等以下。明るいところだと露出計が見にくかった。そんなんでも世界最小のカメラメーカーが作ってると思えば納得できた。
’04年、安原製作所のサイトに業務終了のお知らせが出た。うろ覚えだが、デジタルの進歩が予想以上に速かったから、とか書いてあった。お知らせ自体は事務的で、ユーザーに対するまともな挨拶はなく、会社畳むにあたって一句詠んであった。この一句がカチンと来たんだよなあ。会社なくなるってことはサポートが受けられなくなるってことで。「実用機」だから一式を買ったのに、話が違う。修理を必要とする精度なのに、とっととつぶれてもらっちゃ困る。俺はともかく手にしてから時間が経ってない人もいるだろう。会社畳む側はそれどころじゃなく大変かもしれんが、俳句なんか書いちゃって「やるこたやったよ、すがすがしいね」的気分を出されても。安原製作所は「頑固オヤジの店」みたいだった。客の側には「面白いヤツが面白いこと始めたな。いっちょ乗ってくか」的なとこがあったと思う。なのに「俺が勝手に始めて、勝手に終わる」って態度に出られちゃしょんぼりだ。物を買うときは1票投じるつもりでいるんで、この本に書いてある「メーカーを支える気持ち」もあったんだが、メーカーの方でユーザーに対する義理を欠いてるんじゃないか。一式は壊れる前に売った。
そんなんで安原製作所をあまり良く思ってないんだが、2号機・秋月の失敗の下りを読んで、まあしゃあないかと思った。秋月はアンラッキーだが、一式はラッキーが重なって出たとこもあるんだな。
新幹線で読んだ
■島田裕巳『日本の10大新宗教』
いい塩梅にまとまってる。
こういうの、読んだ端から忘れちゃうんで、いっぺんノート付けるとかしないとダメだな。
■橋本 治『日本の行く道』
今の世の中がおかしいなら、間違う前に戻ってやり直せばいい。具体的には’60年代前半。まず高層ビルを壊そう。むちゃくちゃなことを言ってるが、むちゃにも理がある。そんな内容。他の本でも家内制手工業に戻ればいいって書いてたが、その詳細的な。
■水兵きき『おまかせ! さやなのもえろ部』1巻
脳内完結でちまちまやってる感じに乗ってけない。この人のマンガってこんなだっけ? と『みかにハラスメント』(→感想)読み返したら、やっぱ『みかに』の方が全然面白い。この違い、人によっては気にならないのかもしれんが、俺的には凄い差がある。たまたま『もえろ部』がアウトなのか、たまたま『みかに』が大ヒットなのか。今後も注目しといた方がいいのかどうなのか。
■あと『栞と紙魚子』のドラマちょっと見た。うお! このサイト、諸星大二郎のコメント動画あるじゃん! “諸星大二郎の世界”んとこ。つーか、なんで俺はこんな映像で喜んでるんだ?
意外とドラマ向きの原作だなと思った。ドラマの方がキャラがマンガっぽい。紙魚子は結構好み。AKB48なんだな。メガネかけてないとダメだな。
カメのきた道
■平山 廉『カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化』読んだ。主に化石の話。一般向けとは言え、構造の話とかはややこしい。
<略>体重が同じ場合、哺乳類は恐竜もふくめた爬虫類の一〇倍以上の大きさの脳を持つと結論できる。
<略>
恒温動物は変温動物に比べるとはるかに多量(体重が同じなら一〇倍以上)の食物を摂取する必要があり、したがって爬虫類よりはるかに多くの外的情報を脳に入力・処理せねばならない。より多くの食物を摂取せねばならない恒温動物が、変温動物より多くの学習能力、したがってより大きくて複雑な脳をもつのは、むしろ当然のことである。また哺乳類の高度に組織化された脳は、安定した高い体温という環境(恒温性)がないと正常に機能しない仕組みにもなっている。私たちが、風邪などを引いて、ごくわずかの体温変化でたちまち体調を崩すことから実感できるように、恒温動物にとって恒温性を維持することは生存に不可欠な条件である。<略>
変温動物の脳が恒温動物に比べると小さく、学習能力も低いのは事実であるが、これは生きるのに必要なエネルギー、そして知能を「節約」していると言い換えることもできる。<略>カメは一度食いだめをすれば、1ヶ月程度の絶食はごく当たり前のようにやり過ごせるが、ほとんどの哺乳類は毎日のように食事をしないと健康に生きることができない。<略>
<略>
人間など高等な霊長類の脳は、哺乳類の中でもとりわけ大きいが、これは彼らが群れをつくり、高度に組織化された社会生活を営むことを反映している。群れの中には些細な個体差を反映した厳密な順位や序列があり、それぞれのメンバーは自分や相手の地位、力関係をいちいちわきまえたうえで行動せねばならない。さもなければ群れから放り出されてしまいかねない。極論するなら、相手の顔色をうかがったり、「空気を読む」ためにこそ霊長類の学習能力は発達してきたと言うことになる。その終着点が言語をもつようになった現代人なのだが、まさにカメとは対極の位置にある。
この辺は文系受けする。あとオサガメの話はおもろかった。
リクガメは日本じゃ南の方にしかいないから、身近な感じがしないせいか、生き物としてあんまりいい設計じゃない印象があったが、人間さえいなきゃうまくやっていけるらしい。
オルタナ医療
■アスペクトから出たYMO本『イエローマジックオーケストラ』。インタビュワーが流石に濃い。羽良多平吉の装丁も濃い。っていうか薄い。白にエンボスだから書影がなんだかわからない。
■パンシャーヌは誰に向けてどうするつもりなんだろう。俺は観るが。
■毎日病院行かなきゃいけないんで、11時半に寝て、7時半に起きる規則正しい生活をしとります。
べろべろになった手は、「こんなんどうやって治るんだろう」と思ってたが、フィルムを逆回しするみたいに治ってきた。人間、凄え。一応マウスも使えるようになって、仕事もしてる。
ただ親指は表裏全周やられてるんで治りが遅い。植皮する必要があるとのこと。んで、親指に包帯してるとマウスを持ち上げるとき滑るから、長距離のドラッグができない。
身体の方は思ったより悪かった。結構な範囲に植皮がいるっぽい。
包帯してる限り痛みはなかったのに、一度ゲーベンという塗り薬に替えた日に、凄く痛くなった。翌日もとの薬に戻してもらったらおさまったものの、その後も微妙に痛みが続いてる。検索してみると、ゲーベンは火傷治療に普通に使うものらしいんだが、こいつに凄く悪いことされた感じがする。
検索でこんなん出てきた。
私の観察では,ゲーベンクリームを使っている限り,皮膚の再生は起こらないし,むしろ創は深くなる。つまり,ゲーベンは3度熱傷を人工的に作ってしまう。
あー。けどまあ、ここでゲーベンの名が出てるのは代表的な薬だからで、ゲーベンだけが悪いと言ってるんじゃないんだろうな。
上に登ってみると『新しい創傷治療 「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して』。というサイトだった。知識がまるでないから、どのくらいどうなのかわからんが興味深かった。創傷治癒の基礎知識から読むと、主旨がわかりやすい。
医療も色々ですなあ。