■副題が「太平洋戦争に見る日米摩擦の底流」。人種の面から見た太平洋戦争。初版は’87年。出たときに話題になってたのかもしれない。
第一部は全体の俯瞰。日米お互いにクソミソ言い合っていたわけだけど、悪口には根拠があってデタラメじゃなかった。お互い実際ひどかった。つまりはお互い様だった。相手をひとまとめのステレオタイプにはめるっつーのは反日・嫌韓の人らが今もやってることで。進歩がない。
第二部はアメリカが日本をどう思ってたか。自分がどう思われてるかは誰しも気になるところで、日本人的にはここが一番面白い。うんざりするほど日本人がクソミソに言われる。「黄色い猿」に差別が含まれてると知ってはいるんだが、実感としてどんなふうかはわかってなかった。太った人をブタ呼ばわりするのとどう違うのかピンと来ない。そのへんが、うんざりするほど読めばなんとなくわかってくる。概要まとめたり、どっか抜き出して引用したところで「そんなのは知ってるよ」ってことになっちゃうんで、やっぱりうんざりするほど読まないと。
妙だったのは、日本人は平衡感覚に欠陥があるから航空機の操縦に向いてないと思われいて、その原因は乳児のとき、背負われてシェイクされるからじゃないかと言われてたこと。
もうひとつ。日本人が精神的に未発達なのは、子供の頃の厳しすぎる排便のしつけにあると説明されてたらしい。厳しすぎるってどういうことだろう。欧米はどうしてたんだ? それか当時の日本は、今はなくなった異常に厳しいしつけをやってたのか?
第三部は日本からみたアメリカ。なのだが、単純に裏返しにならない。欧米は現に勝ってたから、白人から見て白が優秀なのは自明のことだった。一方、日本は遅れてきて欧米から学んでる立場だから、黄色人種の方が優れているとは言えない。で、精神的に優れていると主張し、アジアの白人になろうとした、って話。
第四部は戦後の話。これがないと話はまとまらない。まとめに向けて、こじつけた感じがしないでもない。それでも興味深くはある。
気持ちの問題は客観的に扱いにくいもので、歴史関係の本としては比較的怪しい部類になるのかもしれないけど、実利の面であーなってこーなってって話より、よっぽど今に繋がる流れがわかる感じで面白かった。