『80年代の正体!』

cover宮沢章夫『東京大学「80年代地下文化論」講義』(→感想)読んで気になったんで、別冊宝島『80年代の正体!』を古本屋で買ってきた。今となっては読む意味ないですな。当時もなかったかもしれん。
 「それはどんな時代だったのか ハッキリ言って「スカ」だった!」と副題にあるが、単なるキャッチでしかない。編集方針に沿って、全体に批判的なトーンになってはいるけども、ハッキリとスカだと言われてる感じはしない。っていうか、何を言ってるのかわからない文章が多い。なにより『80年代地下文化論』が擁護した「ピテカン的なもの」、西武セゾン文化に対する、まとまった批判がない。
 ’80年代に新しく起きたことを’90年時点で振り返って分析してるんだけど、その対象が今となっては新しくもないし特別でもない。当たり前になってる。コンビニ、デオドラント、健康、モラトリアム。今も普通にある。
 だからって、今も通用する内容だったりもしない。語り口が古くさい。「コンビニエンスストアの空虚さ」とか言われても「はあ?」みたいな。
 どんなスタンスから、誰に向けて誰を批判して、どこに落とすつもりの文章なのかが、今読むとへんてこだ。「大衆」って言葉が妙に目に付く。なんか、体制・大衆・文化人っていう切り分けがあるっぽい。体制からも大衆からも離れた文化人が書いた、体制と大衆を分析して批判する文章を、一体、誰が読んでどう役立てるのか? 「批評家ワナビーが分かったようなことを言うために読む」しか思い付かないんだけど。昔はこんなんが多かったのかね。今もやってる人はいるんだろうけども。
 「’80年代はスカだった」と言い出したのは誰か、となると、やっぱり(考え方が)古い世代の人ですよ。オタクは関係ない。
 面白いところの少ない本で、’80年代風俗を振り返って懐かしさを楽しむにも辛い。でも、「フリーター」って言葉も、その「自由な生き方」も、リクルートが『フロム・エー』のキャンペーンで作り出したものだってのはすっかり忘れてた。あと広瀬隆『危険な話』で騒いじゃったクチなんで、批判されて恥ずかしかった。あれは、なかったことで、ひとつ。
 「バブル」って言葉が出てこないのな。’91年までか。いとうせいこうが『MESS/AGE』で「もう来てる それは泡の時代」とラップしたのは’89年だが、これは関係ないか。

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