生物濾過が立ち上がらない19ヵ月目('05/5/21)

■飼育状況

 甲長96ミリ、体重192グラム。2ヵ月で3ミリと20グラム増加。
 まだ新しい環境に慣れない。エサクレして食べに来るのに、レプトミンを10個ほど食べたあたりで、思い出したように逃げる。数回に分けて1日20〜30個与えている。
 フィルターの水流が気になるらしく、シャワーパイプの下で行ったり来たりしている。遊びになってるならいいが、ストレスになってれば問題だ。
 カメが落ち着かない一因は水音かもしれないと思い、シャワーパイプを水面下3センチあたりに移動し、上向きに噴水するようにした。静かになって人間にもありがたいし、これでも油膜の撹拌はできるのだが、エアレーションされないのが欠点。
 狭くなった立方体の植木鉢にはあまり入らなくなってきた。新しく入れた台形の植木鉢にも相変わらず入らない。壁面に付けたヒーターの下に、アタマだけ隠している。何かシェルターを用意せねば。

■外部フィルターの調子

 以前は週に2回、全量換水していた。現在は水量が倍以上になり、フィルターも強力になっている。生物濾過が立ち上がる前でも、単純に考えれば1週間水替えしなくても良さそうなものだが、3日目にはアンモニア量が凄いことになる。水中フィルターの濾過が、いかに足りてなかったわかる。富栄養化した水に発生するというミズミミズも出た。
 生物濾過の稼働を確かめるため、亜硝酸試験紙を買ってきた。ニトロバクターの方が発生が遅いということなので、亜硝酸が検出されれば稼働し始めた目安になると考えた。5週目でようやく亜硝酸塩が検出されたっぽい。「されたっぽい」というのは、試験紙の変化が微妙すぎてはっきりしないため。試験紙じゃなく試薬を買えば良かった。
 ホースの内側に白いフィルムのようなものが付く。コケなのかバクテリアの一種なのか、変質したホースなのか。前の水槽でもプライムミオのボディーやキスゴムなど、軟質プラスチックの部分に付いていた。外部フィルター設置から2週目、はがれたフィルムが水槽内に大量に出てきた。フィルターを開け、パッドに付いたフィルムを取り除き、セラミック濾材も飼育水ですすいだ。次の日、水面が油膜で覆われた。その後、ホースには茶ゴケが付くようになり、フィルムのようなものは付かなくなった。
 4週目にまた開けてみると、活性炭パッドにはゴミが付いていたが、粗目パッドは掃除の必要がなかった。活性炭パッドは不自然に生臭かったので捨て、半分に割って薄くした細目パッドに交換した。

立ち上がってるはずの20ヵ月目('05/6/21)

■飼育状況

 甲長98ミリ、体重194グラム。2ミリと2グラム増加。
 新環境に慣れた。エサも最後まで食べる。今日、水槽の模様替えをしたので、またしばらく落ち着かないかもしれない。ぎゅうぎゅうになったシェルターを外し、レンガを組んでシェルター的な場所を作った。陸場はなくして浅場を広くした。水深は19センチに増やした。

■試薬

 相変わらず亜硝酸は有意な量検出されない。が、濾過が効いていれば亜硝酸は検出されないのが普通だそうだ。アンモニアが大量にあるなら亜硝酸も出ると思ったのだが、すんなり硝酸に変えられてるのだろうか。硝酸塩試薬を買えば良かった。
 テトラのアンモニア試薬を買ってみた。ニッソー製より断然使いやすい。テトラは黄色→青緑の変化だけ見ればいい。ニッソーは色の濃度も変わり、アンモニアが少ないと透明に近くて比色しにくかった。よくわからないときは多めに見ておいた方が無難なので、結果的に今までは実際よりアンモニアが濃いと判断していたことになる。来月はきちんとデータを取ってみようと思う。

■外部フィルターと酸素

 やはり多少なりともエアレーションした方がいいだろうと思い、シャワーパイプをわずかに沈めて、水槽の壁方向斜め上に噴水するという折衷案を採った。水中に巻き込む泡はエアポンプに比べれば断然少ないが、循環した水が空気中に噴水されガラス面で広がるのだから、水が空気に触れる機会は増える。
 外部フィルターは密閉されているため、濾過バクテリアへの酸素供給が少なくなるという。実際そうなのだろう。ただ、「密閉」が強調されすぎているように思える。フィルター内は常時水が流れている。人間も密閉された部屋に閉じこめられれば窒息するが、換気扇が付いていれば問題はない。水が空気に触れる面積は、外部フィルターも底面フィルター(エアリフトではなく水中ポンプを使う場合)も同じだ。底面フィルターで酸欠になるなど聞いたことがない。上部フィルターのように密閉されていなければ、水面が増える分、空気に触れる面積が増えるのは確かだが、密閉=酸欠は見た目のイメージにとらわれすぎだろう。問題は溶存酸素の量で、フィルター内が密閉されているか空気にさらされているかは直接関係ないのではないか。
 水槽から“汚れていて・酸素を多く含む水”がフィルターに流れ、フィルターからは“綺麗で・酸素が消費された水”が出てくるイメージがある。これも実際そのとおりだろう。しかしフィルターに入った水は、ごく短時間で水槽へ出て行く。大きなゴミは1度で濃し取られるにしても、バクテリアによる硝化がそれほど早く強力に行われるとは思えない。フィルターへ繰り返し水を通すことによって、徐々に濾過されていくはずだ。水槽とフィルターは見た目ほど独立していない。給水側と排水側で水質差があるには違いないが、水槽内の水とフィルター内の水は、汚れも酸素の量も大きく変わらないとイメージした方がむしろいいように思う。
 濾過に関していろいろ言われているが、想像の域を出ない話が多い。きちんと研究をしているところはあるはずだから、科学的な正解をわかりやすく教えてくれるメディアがあればいいのだが。

立ち上がった21ヵ月目('05/7/21)

■飼育状況

 甲長98ミリ、体重202グラム。甲長変わらず、8グラム増加。特に問題なし。レプトミンは1日30個。

■コケ問題

 以前からコケは悩みだった。見苦しいだけじゃなく、カメの甲羅にも生える。外部フィルター導入で、新しい問題も出てきた。ホースに生えると流量が落ちるのだ。濾過がうまくいけばコケは生えないらしいが、ベアタンクでは難しそうだ。カメの場合、エサ量や光量を減らすこともできない。
 細目パッドの下に、フォスガード・Miniパックを入れてみた。フォスガードはコケの栄養となるリン酸塩と珪酸塩を吸着除去するらしい。コケを枯らす薬品より安全そうだ。

■水質チェック

 ようやくアンモニアが検出されなくなった。濾過バクテリアは3週間前後で定着するそうだが、ウチの場合、アンモニアが出なくなるまでに3ヵ月かかった。
 テトラのpH試験紙を買ってみた。濾過が進むにつれ酸性に傾くはずなのに変化がない。パワーハウスのpH調節機能が効いているのか。
 結局、レッドシーの硝酸塩試薬も買ってしまった。硝酸の増加が計測でき、生物濾過の稼働がようやく確認できた。それはいいが、1回の換水量をバケツ一杯(12リットル)にするなら、3日ごとに換水しないと硝酸塩の増加に追いつかない。こんなに汚れるものだろうか。

■コスト削減

 外部フィルター導入の目的のひとつは、コスト削減だった。水替えの手間を減らすこと、フィルターのメンテナンス回数を減らすこと、使い捨て専用濾材を使わないこと。
 水替えの頻度は、水中パワーフィルターを使っていたときと同じ週2回。ただし、以前は全換水していたが、今は1/3量で済んでいる。水量が増えてくると全換水は大変だ。
 水替えのインターバルを伸ばすには、ゴミを減らすことだ。エサを減らすわけにはいかないが、ゴミを取り除くことならできる。試しにホンマ産業のストレーナーカバーSを付けてみた。450円で2個入りとリーズナブル。ストレーナー部分だけ覆う小型のスポンジで、見た目がすっきりしていて、掃除の際も取り外しが楽だ。外部フィルターの前段階でゴミを取り除けるのはいいのだが、カバーの掃除を頻繁に行う必要がある。物理濾過をフィルターの入り口でやるか、内部でやるか、どちらがいいか決めかねる。なにより、カメがスポンジをかじるようなら使えない。しばらく様子見。パイプとストレーナーの間からスポンジをスルーして水が入るので、使い続けるならどうにかしてこの隙間を埋めた方がいいだろう。
 細目パッドは互換品が出ていた。ダイカのオプションフィルター25。6枚パックで、純正品の3枚入りより安い。つまり、半額以下。これをさらに半分に薄くして使うので、コストは1/4。
 フィルターのメンテナンスにかかる手間はまだわからない。ホースのコケの生え具合にもよる。

■濾過の謎

 サブストラットなどの濾材は、多孔質により広い表面積をウリにしている。表面積が広ければ、バクテリアがたくさん住み着く。
 一方で、多孔質には意味がないという意見もある。濾材はぬるぬるしたバクテリアのコロニーで覆われるので、小さな穴など埋まってしまう。メーカーは濾材内部までバクテリアが住み着くと言うが、そんな水通りの悪いところにいたところで、濾過にはあまり貢献しないだろう。微細孔の奥で嫌気濾過が起きる可能性が語られることもあるが、特に工夫もない好気濾過槽内で有意な脱窒が行われるとは思えない。
 リング濾材で濾過がうまくいっている例は多い。微細孔に意味がないとすれば、実は全くつるつるのリングで十分ということになる。本当だろうか?
 というのも、ウチのサブストラットは変化がないのだ。バクテリアは粘性の物質で固着するものらしいから、ぬめりが全くないわけではないんだろう。ただ、触ってすぐ分かるほどには、ぬめりで覆われていない。汚れも変色もない。だけど一応アンモニアが出なくなった。ぬめりの量を生物濾過がうまくいっている目安にするのは正しいのだろうか。
 立ち上げて1年以内のバクテリアは定着性が弱いという説がある。しかし、それでは1年間、生物濾材が何の役割を果たしてるのか理解しにくい。生物濾過が機能する1ヵ月で、バクテリアは十分定着しているはずだ。それに、供給されるアンモニアを処理できる数以上は、エサ不足で増えないはずだ。なら厚みをもって定着しているのは余分なバクテリアかもしれない。ぬめりなしで稼働しているのなら、今後もバクテリアが厚みを持たずに定着してくれた方が、セラミック濾材の表面積は活かせそうだが……。
 今後、濾材がぬめりに覆われるとしても、その厚みで生きていけるのだから、ぬるぬるの中に対流のようなものがあり、奥に埋もれたバクテリアも硝化に参加できるのではないかとも考えた。しかし、日本下水道施設業協会の固着生物法(生物膜法)・回転生物接触法の解説には「生物膜は微生物の増殖により次第に厚くなり内側に酸素が届かなくなると、生物相が変りやがて剥離し、更新されます」とある。酸素が届かなくなる厚みがどれくらいかわからないが、届かなくなることはあるようだ。ウチのフィルター内でも酸欠になるほど生物膜が厚くなるとすれば、やはりミクロ単位の微細孔に意味はないだろう。多孔質セラミックに付いたバクテリアは、濾材をゆすぐ程度では綺麗に剥離・更新されないように思える。濾材表面では目詰まりとなり、生物膜の外側だけが更新されるだろう。
 実験動物用給水設備のメーカー、エデストロムのサイト内、バイオフィルムのページも参考になる。配水管の菌をいかに減らすかというフィルターとは逆の観点で、主に緑膿菌について書いてある。典型的な単一種コロニーは、底の厚さが5〜10ミクロン、マッシュルーム状に盛り上がった部分が100〜200ミクロンで、コロニー自体が通水性のある構造になっている。一方で「50〜125ミクロンの厚さで嫌気性ゾーンを持つ」とも「バイオフィルムは単層の細胞でできているか、または藻菌マットと同じ300-400mmの厚さになる」ともある。また、細菌は流速の落ちる吸水管の傷に沿って発生し、「ざらざらした‘艶消し’仕上げのステンレススチール表面には電気研磨したスチール表面よりも1.4倍の微生物がついていた」とする一方で、「表面に付着する細菌の最大数は表面の粗さには関係ない」とある(ここでの「粗さ」はミクロ単位の話)。
 つまり、厚さ200ミクロンまでのコロニーは通水性を確保している場合があるが、50ミクロンの厚さで酸素が届かない部分ができる場合もある。粗い表面にはバクテリアが付きやすいが、コロニーが厚くなれば関係なくなる。
 フィルターの話に戻る。何らかの理由で、濾材が今後もぬめりで覆われなければ、凹凸に意味がないはずがない。 顕微鏡レベルの穴が無意味だとしても、ルーペで見える程度ならバクテリアにとって十分大きいはずだ(*'07年追記:2年経っても濾材はぬるぬるしていないし、ルーペで見える大きさの穴は目詰まりしていない)
 年単位でフィルターを空けないアクアリストも多いようだ。濾材を洗うとバクテリアにダメージを与える。多孔質濾材は洗うほど性能が落ちる。できるだけいじらない方がいい。しかしもし、ぬめりで覆われるのが長期間の放置のせいだとすれば、ある程度頻繁に洗った方が、結局濾過能力が高まるのではないか。バクテリアが薄く、しかし有効表面積が多い状態で付着しており、薄いから飼育水で軽くゆすぐ程度の洗浄では窪みの中にいるバクテリアはあまりダメージを受けないとしたら……。仮定の話でしかないが、ここを見ると浄水設備でも濾材の目詰まりを落として濾過能力を上げる考え方があるようだ。魚の場合は水質の安定性が重要だから、濾材のメンテはリスクをともなうのかもしれないし、メンテせずに上手くいっているならいじる必要はない。しかし水質にさほど敏感ではなく、強力な濾過能力が必要なカメの場合は、短期のメンテでぬめりを落とした方が有利だったりしないだろうか。
 ごちゃごちゃ言っているが、私は微細孔を持つセラミック濾材に意味があると思っていて、だからサブストラットとパワーハウスを使っている。せっかくなら少しでも良い濾材を使いたいのだ。意味がないという話もそれなりには納得できるのだが、いまいち信用しきれない。濾材メーカーの言い分をまるっきり信用しているわけではないが、多少なりとも専門的なデータを持っているのはアクアリストではなくメーカーの方だろう。先月の繰り返しになるが、(大規模な浄水設備ではなく)観賞魚フィルター内での濾過について、微生物の専門家による科学的な正解を読んでみたい。
 まあ実際のところ、多くの場合、濾過容量に余裕のあるフィルターが使われていて、濾材の性能はさほど問題じゃないんだろう。どれを使っても上手くいくから諸説出るのかもしれない。
 以下、初心者なりに濾材について思うところを箇条書き。

  • ぬるぬるもそうだが、「フィルター内のゴミは活性汚泥で、バクテリアが多く棲み着いているから綺麗にしすぎない方がいい」という話は本当だろうか。まず、浄水設備の活性汚泥と、水槽用の濾過器のスラッジを全く同一視していいのか疑問だ。確かにゴミには多くのバクテリアが棲んでいるだろうが、濾材表面のバクテリアでは足りないのだろうか。ゴミの多いカメ水槽ではゴミは捨てたくなるものだが、汚れの少ない小型観賞魚の水槽なら、なおさらゴミを保持する必要はないのではないか。
  • 外部フィルターを買う前から気になっていたのだが、パワーハウスMサイズ程度のリング濾材は、2234クラスのフィルターにとって大きすぎるのではないだろうか。砕いて使う手もあるが、リング形状の整流効果は損なわれる。キョーリン・エアロリングはサイズが小さい上、肉眼で見える凹凸が多く、かなり表面積を稼げそうに見える。が、小さすぎてちょっと詰まるとリングの意味がなくなりそうでもある。Mサイズとエアロリングの中間があれば良さそうだが。
  • シポラックスのウリである連続した微細孔は、その後のセラミック濾材にも踏襲されていそうだ。シポラックス以前にそういう濾材がなかったから優位だったが、今はそうでもないのかもしれない。
  • 洗車スポンジの通水性はイメージほどではないと思う。スポンジには弾力があり、押せば凹んで水が出るが、フィルター内で誰かがプニプニやってるわけじゃない。弾力のないスポンジを想像してみれば、軽石に似たものになる。つまりはセラミック濾材にも近い。軽石が(pHに影響しないものなら)良い濾材であるように、洗車スポンジも良いのだろう。
  • 目の粗いスポンジを刻んだ濾材が出ているが、意味がないのではないか。洗車スポンジは目が細かいから刻む意味がある。粗目パッドのような通水性のいいスポンジは、板状のままの方がデッドスペースがなく表面積が稼げるはずだ。
  • セラミックは水に溶けないからパワーハウスのpH調整機能はウソと言う人がいるが、大雑把すぎるだろう。セラミックにも色々な種類がある。溶け出してしまえば機能しなくなるという話もあるが、例えば10円玉を水に入れれば銅イオンが出ると思うが、短期で出なくなるのだろうか。また、珊瑚礫の寿命は短いのだろうか。

だいたい結論が出た22ヵ月目('05/8/21)

■飼育状況

 甲長99ミリ、体重212グラム。1ミリと10グラム増加。レプトミンは1日30個弱。もっと減らしてもよさそうだ。

■フィルターの状況

 まだときどき少量のアンモニアが検出されることがある。やはり2234クラスでは能力不足のようだ。あるいはフンをしたばかりで、処理される前に測定したのかもしれない。なんにせよ濾過能力が追いついたところで、どのみち週2回の水替えが必要なんだから、少々アンモニアが出ても大きな問題ではないようにも思う。
 ホンマ産業のストレーナーカバーSはかじられないで済んでいる。しかし、カメが暴れると外れてしまうことがある。どうせならテトラ・P-Iフィルターの方が良さそうだ。
 フォスガードは効いているようだが、ウチの環境ではコケが生えなくなるほどではなかった。光量と硝酸が多いから仕方ないだろう。ミニパックの中に小さな粒がみっちり入っているため、フォスガードの部分だけ水の通りが悪くなるのも少々不安だ。継続使用はしないことにする。
 ホースに付くコケは不思議なほど水流を弱める。フォスガードを使わないとなると、2〜3ヵ月毎にホースの掃除が必要になる。これは結構手間だ。