• テーマ・ドリブン

    ■先週スピリッツで始まった山田玲司の連載が香ばしいんだけど、スピリッツはウケりゃなんでもいいんすかね。
     
    ■こないだ書いたとおり、戦後民主教育どっぷりで育った。学校の先生が言うには、反戦・平和、人権、愛、友情など「人間」が描かれたものが良い作品。
     一方、中学生の俺を魅了したのは、ヤマト、ザンボット、ガンダム、タイムボカンシリーズ、がきデカ、筒井康隆などだった。
     ヤマトなんてタイトルの時点でどうしたってダメ。軍靴の足音響きまくり。教師が認めるわけがない。ザンボット・ガンダムは普通のロボットアニメじゃないんですよ、深いんですよと言ってみたところで、戦争をエンターテイメントにしてる時点でダメ。
     実際のところ、ザンボット・ガンダムは見てもらえさえすれば、最終的に否定するにせよ一定納得してもらえるんじゃないかと思ってた。問題はうしろの方。左寄りの先生は、笑いとか娯楽とかに対し、「それも必要」なんて取って付けたみたいな評価をする。「人間」を描いたものより明らかに下に位置付けながら。笑いと娯楽が必要にしても下品でめちゃくちゃな(だから面白かった)がきデカと筒井康隆を認めるわけがない。
     自分が好きなものを軽んじられた中学生の俺としては、どうも気に入らない。テーマで価値が決まってしまうんなら、小説だのマンガだの音楽だのってのは、ただの手段じゃないか。手段に堕してしまっていいのか。それは小説だのマンガだの音楽だのに対して失礼じゃないのか。愛とかも深いかもしれんが、何が面白いかわからないが面白いってのも深いんじゃないか。テーマで語りきれないものがあってこそじゃないのか。
     とか思いながら現在に至るわけで、アレなテーマでマンガを手段化する山田玲司には眉間に皺が寄りまくり。

  • 生潮音

    こないだ買ったCDにサイン会参加券が付いてたんで、湯川潮音のインストアライブに勝負下着で行ってきた。
     目の前の存在というか器官から玄妙な音が出てくる不思議。
     サイン会はiPhone買えそうな勢いの行列であり、目の前でサインもらったりしたらファンであることの意味が不純になりそうなのでやめた。映像で見るよりお美しかったし。

  • 『占領と改革』

    占領と改革 (岩波新書 新赤版 1048 シリーズ日本近現代史 7)雨宮昭一『占領と改革』読んだ。
     戦後民主教育にどっぷり浸かって育ったのだが、あとになって思えば俺らの思考はGHQの思惑どおりに作られてんじゃないか。軍部だけが悪いってことになって、民主主義の主権者であるはずの国民と、逆に頂点の天皇は免罪されて、責任を取り損ねた。「戦争はイケナイ、上の人間が暴走してやったことで庶民は常に被害者だ」と考えるようになった。
     庶民って言葉は使わなくなったけど未だに「お上VS庶民」の構造はあって、庶民はお上に文句言ってればいいと思ってて主権者の自覚を持たない。
     GHQの思惑どおりじゃなさげなとこは、戦後民主教育が左なこと。片っぽではアメリカ文化にしっぽり染まったが、片っぽで反米もある。そのへんがわからない。
     なんにせよ自分のベースには、戦後処理が大きくかかわってる気がする。
     
     そういうことで買ったんだが、この本の主旨は、これまでの占領政策の評価に対する反論だった。日本はアメリカの占領で民主化・近代化されて良かった、ということになってるが、そういう評価はどうなんだと。日本の民主化はホントにアメリカのおかげか、アメリカがいなくても近代化できたんじゃないかと。
     そもそも占領政策そのものをよく知らないので、そっから先の話をされてもわからない。
     わからないが、この本の視点にはヒリヒリ来るものがある。例えばこれ。

    <…>アメリカ政府ではアメリカが中心となって日本を占領し、ソ連とイギリスと中国で分割統治をするという案を考えていた(五百旗頭真『米国の日本占領政策』下)。しかし、この五百旗頭の議論もそうだが、敗戦が早まって分割されなかったのは非常にラッキー(幸運)だったと強調されることが多い。しかしラッキーだったという視点でよいのか。それよりも、もし分割された場合には、異なった展開が考えられて、必ずしも悲惨な状況というばかりではないあり方があったのではないか。(P.22)

     歴史が好きな人って、人物が好きな印象がある。誰が、どう考えて、どうなったか、キャラ寄りで考えてる感じがする。この手の、誰かの意志が歴史をドライブする「意志ドリブン」みたいなのには違和感がある。フィクションでもそうで、かわぐちかいじ『ジパング』に全然のってけないのも、人物優先・意志ドリブン史観だから。自分のことも自分でわかんなくて意志どおりには動かないものなのに、政治みたいなデカいとこでそんな単純にことが進むんだろうか。権力者が歴史に大きな影響を与えるのは当たり前にしても、そのうしろには民衆やら周囲の状況やら、いろんなファクターがあるはずだ。上で引用した文章には、いろんなファクターといろんな可能性が折り込まれてる。「分割統治されてたらされてたで、違う未来があったんじゃないの?」なんて、なかなか言えない。でも、そういうもんだと思う。だもんで、視点に信頼がおけるこの本は、入門書として読んでも面白かった。
     
     読んだはじから忘れちゃうんで、これからはノートを取ることにする。
     

    <…>農村と都市、ジェンダー等々を含めたさまざまな格差と不平等は、一九三〇年代以降も存在した。とくに一九二九年から始まる世界大恐慌の中では、この格差と不平等が緊急に解決すべき問題として出てくる。この問題の解決には三つの方法があったと考えられる。第一は社会運動による解決、第二は社会の中の支配層の進歩的な勢力と社会の中間層以下との連合による解決、第三は総力戦体制への参加による平等化と近代化、現代化による解決である。(P.3)

     総力戦体制で平等になる。
     
    ’20〜’30年代の政治潮流

    • 国防国家派:陸軍統制派、商工官僚、財閥。上からの軍需工業化で結果的に平等化、画一化
    • 社会国民主義派:下からの平準化。東亜共同体
    • 自由主義派:民間企業の自立。統制を望まない
    • 反動派:陸軍皇道派、海軍艦隊派、観念右翼、地主。民主化で既得権を失った

    上ふたつは総力戦体制で得をする。下ふたつは損をする。
    右/左で言えば、社会国民主義派が左だが、国防国家派と利害が一致する。どちらも大きな政府指向。
     

     社会国民主義派と国防国家派の連合は東条内閣の成立でピークを迎えるが、国内での総力戦化へのいっそうの進展と国外での軍事的敗退のはじまりによって、東条内閣の後半には、総力戦体制に否定的な反動派と自由主義派の連合が台頭した。四五年二月に出された「近衛上奏文」は、まさにこの反東条連合のマニュフェストであった。
     近衛の主張の主旨は、現在政治をおこなっているグループは私有財産を侵し、家族制度を侵し、労働者の発言権を増大させているということに尽きる。<…>つまり、私有財産を侵すものに反対するということを通して、総力戦体制の根幹的な問題にふみこむものであった。
     総力戦体制では現実に富を生みだし、労働する者が、相対的に地位を向上せざるをえないのである。したがって、従来の地主や資本家の思うがままの体制に対抗して労働者の福祉や保険の制度、地主の持ち前をいちじるしく削る食糧管理制度等々がつくられて、労働者や農民の経済的、社会的地位が向上した。それが、近衛上奏文の「労働者発言権ノ増大」という表現にあらわれている。
     また家族制度を侵すというのは、総力戦・総動員体制の中で、女性労働力の社会への進出、女性の社会的地位の向上を意味した。(P.12)

     好戦=右=資本主義、反戦=左=社会主義のイメージがあったが、そうでもないと。

  • 5枚組と6枚組

    灰色とわたし湯川潮音『灰色とわたし』。メジャー移籍後2枚目のフルアルバム。
     1枚目がいろいろと良くなかったんで、その後のミニアルバムもびびりながらiTSでつまみ買いしてたけど、今回はシンプルな作りで良かった。声が綺麗に響く。湯川潮音は声の人なので嬉しい。音が普通にフォークっぽいのが、やっぱりちょっと不満だったりするけど。ジャケの自画像については何も言いませんけど。
     変な言い方だけど湯川潮音の場合、歌を声で聴いてるんじゃなく、声を歌のかたちで聴いてる感じがする。魅力的なボーカリストなら声の魅力で聴くのは普通だが、湯川潮音だけボーカルじゃなくて“声”を聴いてる。
     
     栗コーダーカルテット&湯川潮音『溜め息の橋』iTSで購入。
     
    The Mighty Upsetterリー・“スクラッチ”・ペリー『The Mighty Upsetter』
     久々の秀作と評判。レゲエもOn-Uサウンドも買うの久しぶりだなあ。良くできてんだけど、しっかり緻密に組み立てられたダブって、なんか妙な気もする。
     
    『ブラジル音楽100 〜ブラジル音楽のすべて』。詳細と試聴は公式サイトで。
     BMGの音源から中原 仁が選んだ100曲。CD5枚組で3150円! レーベル縛りがあるんでブラジル重要曲全網羅とはいかないけど入門用にイイ感じ。2枚目と4枚目がイマイチだったけど、人によっては逆の感想を持つかもしれず。とにかく、いろいろ聴けてこの値段はありがたし。
     
    『ベスト・ワールド・サウンズ100』。これだけ新譜じゃなく’05年発売。ブラジルばっかり聴いてるのもアレなんで、そろそろ他の国のも聴くかなと思ってたとこで目に付いた。定評あるJVCのシリーズ100タイトルから1曲ずつ収録。こちらは6枚組3150円! 3000円ぽっちでAround the World in a Dayですよ。まだ全部聴いてないけど、やっぱ声と音色だよなあ。
     こないだ古本屋で買った’92年のムック『地球の音を聴く ワールド・ミュージックCDカタログ』に、このシリーズの中の人、山城祥二の文章が載ってた。一部引用。

     欧米型録音文化支配の深刻な影響は、まず、ハードウェアにみられる。クラシック楽器音の欠陥をおぎなうことで成功したノイマンに代表されるヨーロッパ系のマイク、ポップスのサウンドに魅力をつけくわえるシュアーをはじめとするアメリカ系のマイクの大部分は、その非忠実性によって特定の附加価値を強調する。いわゆる民族音楽のなかで、それが負の効果として作用しないものはごくすくない。収音の段階ではやくも欧米型サウンドへの歪曲がはじまるといってよいだろう。
     モニタースピーカーにも、同じ問題がある。<…>
     欧米型録音文化の罠は、ソフトウェアもみのがさない。近代的専門分化を反映して、録音エンジニアが出自ないし専門をクラシックとかポピュラー音楽などの特定ジャンルに持たない場合は皆無に近い。そしてほとんど例外なく、その専門分野のサウンド・ポリシーを負のバイアスとして作用させる。
    <…>
     こうした陥穽とは無縁なとりくみを最初からつらぬけたことを幸運に思う。

     どこまでどうなのか知らないけど、知らないゆえに面白い。最後の「無縁」をどこまで信じていいかこっちはわからない。突き詰めれば文化圏ごとにオリジナルな機材と優秀なエンジニアを自前で揃えた上、制作時に他の文化圏に色目を使っちゃいけないということになる。なんか不確定性原理みたいだ。

  • 赤灯えれじい

    赤灯えれじい 15 (15) (ヤングマガジンコミックス)きらたかし『赤灯えれじい』15巻。アマゾン、書影まだないじゃん。
     前巻の続きで盛り上がっていって終わるのかと思ったら、案外さっくりそれは片付いてしまった。「茶番や」「そんなもんバカップルのしょーもない内輪もめやんけ」ってシゲのセリフはマンガ全体を否定しかねないセリフで、こういうのがさっくり入るとこが凄いよな。あと、笑いで抜くとこと。
     花火打ち上げるんじゃなく、じっくり地面に染み込むような終わり方がこのマンガらしくて良かった。やー、いい話や。

  • マウス問題

    Microsoft IntelliMouse Optical■またマウスのボタンがおかしくなった。1回クリックが複数回になるのをチャタリングって言うらしい。
     マイクロソフトのインテリマウス・オプチカルってヤツで、チャタリング起きるたび買い替えて3代目。今回は買ってから1年経ってない。必要十分の機能で見た目も悪くない。評判は良くて壊れやすいとは聞かないし、他のマウスも使ってるスイッチは同じようなものだろう。なんか俺の使い方がおかしいのか。チャタリング問題を除けば気に入ってるんだけどなあ。MSのサイトから消えてるが、もしかして生産中止か?
     
     こちらのサイトによるとスイッチだけの問題じゃないそうだ。
    Logicool MX-610 チャタリング問題 解消法 : ものづくり日記
     ダブルクリックの間隔を設定できるけど、あれはどこまで遅いのをダブルクリックと見なすかで、速いクリックは関係ない。もし速すぎる複数回クリックを捨てる設定もできれば解決するような気がするが、そんなんムリか。ウィンドウズにはChatteringCancelerってフリーウェアがあるけどどうなんだろ。
     
    Logicool MX-400BK パフォーマンスレーザーマウス インテリは5年保証だから交換してもらうとして、試しに違うマウス買ってみた。ロジクールのMX-400。しっくり自然に手が乗る形状だが、自然な姿勢を崩すことで操作するわけで、逆に使いにくい気がする。でも慣れの問題かもしれん。サイドにくびれがあって持ち上げやすいのはいいっすな。レーザーは感度が良すぎて持ち上げたときも反応しちゃうものがあるらしいが、これはそんなことない。
     前にロジクールのマウス買ったとき、ドライバがイマイチな印象があったけども、やっぱ設定ソフトが落ちたりする。
     あと、カーソルの加速が極端な感じがする。OS Xになって加速度曲線が改悪されたらしいが、今まで気にならなかった。このマウスはドライバのせいかレーザーだからか、気になる。USB Overdrive使えば加速の効き具合を調整できるんだけど、認識してくれない。
     
     仕事先ではマイティ・マウスで、これまた俺の使い方のクセだと思われるが、サイドのボタンが押しにくいのに、長距離ドラッグのときにうっかり押しがち。持ち上げて降ろしたとき、なんかのスイッチが入ることもある。小さいから他のマウスより疲れる。カーソル飛びが起きる。ボール汚れると面倒。ボタンが1個足りない。
     
     ちなみにサイドボタンはSafari用にcmd+クリック、もうひとつにエクスポゼ。センターはアプリ切り替え(cmd+shift+tab)に振ってるが、ホイールクリックは気持ち悪いからあんまり使わない。

  • ランボー4

    ■ランボー4観た。デキのいいスプラッターだった。永井豪っぽい。
     こういう映画作れちゃうアメリカってやっぱ凄いなあ。まず特撮のクオリティーが流石。そんでシナリオ。セリフ少ないのに、キャラの配置だけで全部わからせてしまう。余分なものもスキもない。
     まあでも話は単純だし、余分のものがなくて全部わかる映画ってのは面白さの幅が狭いわけで、なんか作品じゃなく製品を与えられてる気もする。俺程度にすっかり分かられる作品ってどうなんだ。スキッとする映画ならそれでもいいけど、そうでもないし。
     今回のランボーは寅さんみたいだった。寅さんちゃんと観たことないのに今適当なこと言いました。
     ランボーシリーズ好きなんで、「今回はこうなったのか」みたいなとこで面白かった。