■オーズよかったですね。
敵は人間の欲望を食らう怪物、グリード。
対して主人公・火野映司は欲望がない男。人のためだけに動く。
ヒーローものの主人公がエゴを捨て、命を捨て、人間を捨てて、人々のために孤独な戦いを続けるのは当たり前。でもオーズではそれを異常なこととして扱う面があった。
欲がないはずの映司が見つけた望みは「どこまでも届く自分の腕」。過去に海外を回っているあいだ、紛争地帯で子どもを助けられなかったことをずっと悔やんでる。オーズになったおかげで人を救う力が手に入ったという。
その正義の力がまた暴走の危険をはらんでるし、映司はグリード化もする。そんで怪物になってまで戦うことがアニメのデビルマンみたいに美化されてなくて、どっちかっていうと病気みたいに描かれてた。
グリードは単なるメダルの固まりで命がない。味覚もない。世界を「味わう」ことができない。アンクは命を欲して刑事さんの身体を乗っとり、一度は映司とも対立する。最後は共闘の末、単に消滅するんじゃなく“死ねた”ことに満足して消える。
ヒーローもので戦う連中は重大な使命を遂行するために全てを捨てたマシーンであり、そこにシビれるってことになってたのに、彼ら自身の生きる喜びみたいのが大事にされてる。
そんで映司は「ひとりで背負い込むな」と言われ、どこまでも届く“自分の”腕なんて大それた欲じゃなく、人と手を繋ぐことでその力を得られると知り、文字どおり手をつないでめでたし!
当初否定的に扱われた人間の欲望。途中で出てきた夢と欲望の違い。終盤映司に求められる欲。わりとややこしいテーマがきれいにまとまった。かなり異色のヒーローっていうか、これまでのヒーローものが見ないことにしてた部分を扱ってた。
手を繋ぐといえば比奈ちゃんね。孤独な戦いに突入しようとする映司に唯一手を差し伸べる。暴走から引き戻す。恋愛ファクターなしでヒロインとしての存在感を強烈に発揮して素晴らしかった。
メズール人間体、未来穂香のセーラー服とニーソも大変に素晴らしい!
後藤さん伊達さんのホモホモしいふたりもよかった。平成ライダーはライダー同士がライバル関係だったりして共闘しないのが不満だけど、オーズは共闘しまくりで嬉しい。
まあでもやっぱり映司の造形が凄かったですね。ああいう天然っぽく無欲で、でも頭が回るっていうキャラを描ききったシナリオライターと役者の力。アンクのキャラも大変によかった。最後の共闘はほんとよかった。