カメラ(主にフィルムカメラ)の基本

Film Camera
 フィルムカメラに関する記事や動画を見てたらなんかもやもやしてきたので、自分が初心者だったときわからなかった、絞りとシャッタースピードの関係について書く。ちょっとややこしいけど、これがわかれば基本OKだと思う。
 
■ピント
 ピントは1点にしか合いません(正確には1球面)。固定焦点のカメラは3メートルあたりに設定されています。それ以外はボケます。よく「1.5メートルから無限遠までピントが合うようにできている」などと、まるで特殊なレンズが使われているような記述を見かけますが、そんなレンズはありません。
 ただ、ボケが小さければボケているように見えないので、ここまでなら合ってることにしようやという範囲があります。この範囲の深さを被写界深度と言います。レンズの焦点距離が短いほど被写界深度は深くなり、ピントが合って見える前後の範囲が広くなります。また、絞りを絞るほど被写界深度は深くなります。反対に焦点距離の長いレンズで絞りを開ければボケが大きくなり、被写界深度は浅くなります。
 マニュアルフォーカスの時代には、ピントの深い広角レンズを絞って使い、目測ピントで素早くスナップするということが行われました。
 ポートレートの標準レンズは85ミリと言われていました。これは、背景をボカして歪みなく撮るために望遠を使いたいが、被写体と離れてしまうとコミュニケーションが取れなくなるので、中望遠の明るいレンズ(絞りが開けられるレンズ)が調度よかったからです。ただ85ミリではポートレート然としすぎるので、最近はより距離感の近い50ミリが多用されます。
 
■露出
 露出には、絞り、シャッタースピード(露光時間)、感度の3要素があります。感度のことはちょっと置いておきます。フィルムの場合は入れたら撮り終わるまで感度は変えられませんし。
 絞りとシャッタースピードの関係は、蛇口からコップに水を溜めることに例えられます。調度いい量の水を溜めるのに2とおりの方法があります。
・一気に出して短時間で止める
・ちょろちょろ出して長時間かける
どちらでも同じ結果が得られます。これを露出に置き換えると
・絞りを開いてシャッタースピードを上げる
・絞りを絞ってシャッタースピードを下げる
となります。適正露出になる組み合わせは複数あるのです。
 調度いい量を溜めるといっても、その量はどうやって知るのか。それは露出計が教えてくれます。難しくありません。
 適正露出になる前提で話します。
・絞りを開ければシャッタースピードが上がります。ボケが大きくなり、ピント合わせがシビアになります。一方で、動体は止まり、手ブレしにくくなります。
・絞りを絞ればシャッタースピードが下がります。ボケが小さくなり、被写界深度が深くなります。動体はぶれ、手ブレの危険性も増します。
 このバランスを考えて露出の組み合わせを決めます。
 例えば、背景をボカして被写体を浮き上がらせたいときは絞りを開けます。動体を撮るときも絞りを開けてシャッタースピードを上げます。人と背景の両方を写したいときは絞り込んで被写界深度を深くします。
 
 カメラの露出計は、反射率18%のグレーを適正露出とします。18%グレーというと薄いグレーのように思えますが、反射率18%は白と黒の調度中間です。画面全体の明るさの平均が白と黒の中間になるのが、露出計にとっての適正露出です(平均測光の場合)。真っ白な壁を撮っても、真っ黒な壁を撮っても、写るのは中間のグレーです(ただし、最近のカメラは状況を判断して露出を決めるので、この限りではありません)。
 適正露出なら見たままが撮れると思いがちですが違うのです。白いものを白く撮りたければ、露出計が示すより取り込む光の量を増やし、夕方を薄暗く撮りたいのであれば光の量を減らさなければなりません。
 また逆光は要注意です。背景が明るいのでそちらに引っ張られて露出計は被写体が明るいと判断し、結果暗く写ってしまいます。露出計が示すより光の量を増やさなければいけません。
 どうやるのか。マニュアル露出のカメラでは露出計が示す値から自由に外して露出が決められます。自動露出のカメラでは露出補正ダイヤルを使います。露出補正ダイヤルのないコンパクトカメラでは、フィルム感度設定を変えることで露出補正ができます。感度設定を低い方にずらせば、カメラはより多くの光が必要だと判断し、明るく写せます。
 
 シャッタースピードダイヤルには4、8、16、30、60、125、250、500、1000などと書かれています。ひとつずらせば露光時間が倍か半分になります。けっこう大雑把です。この倍・半分を1段と言います。倍なら4、8、16、32、64、128、256、512、1024じゃないの?と思いますが、実際設計上はそうなっています。パソコンもない時代、キリのいい数字に丸めて表示したのでこうなっています。また1000と1024は誤差範囲で、シャッター精度はそんなに高くありません。
 絞りの方には、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16などと書かれています。これもひと目盛り1段です。なんか半端な感じがしますが、絞り開口部の直径を倍にすると、面積は4倍なので、面積が2倍になる値が書かれています。
 明るいレンズとは、絞りをより開くことのできるレンズです。絞りを開いたらシャッタースピードを上げて適正露出にするので、明るいレンズを使えば明るく写るというのは間違いです。
 
 最後にフィルム感度。ISO 100、200、400など、これも1段ずつ感度が変わります。100を200にすれば必要な光の量は半分になります。感度が高いほど写りはざらざらしてきます。室内など暗所では400を使いたいところですが、日中屋外に持って行くと、明るいレンズが付いていてもシャッタースピードの限界で絞りが開けられなかったりします。

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