五十嵐大介『リトル・フォレスト』2巻

amazon サクサク読んじゃいけない気がして、ちびちび読んでた。
 俺にとっては驚異の世界。日本の農村の話なのに、ファンタジー読んでるみたい。凄く豊饒。昔はこれで普通だったんなら、なんでこれを捨ててこんなんなっちゃったんだろうと思う。
 「田舎」を持たない都会の人間が、田舎に引っ越して農業始めるってパターンもあるが、俺はやらない。みんなやらない。一部の人しかやらない。っていうか、こんな暮らしじゃイヤだっつって今になった。娯楽が多くて便利で裕福で安定的で衛生的で人が死ににくくなった。
 「田舎暮らしもステキだねー」と軽く言えないのは、田舎暮らしを捨てたとこから俺が始まってるから。よその話と割り切れれば楽しめるだろうが、描かれてる田舎の暮らしが捨てがたく魅力的だから。ステキな生活をしてない自分が揺さぶられるから。作者は揺さぶりたくて描いてるだろうから、まんまとハメられたというか、俺は結構いい読者だと思った。
 「小森に骨を埋めていいのか」という主人公の悩みは、そこに住んでない俺との接点になる。俺にとっては「小森的なものを捨てたままでいいのか」。
 のだが、ラストに関しては何とも言えない。ちょっと面食らった。「うわー、こんなに真っ正面か」と思った。これをあっさり受け入れられるほどいい読者にはやっぱりなれない。

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