ニコン1がかわいい

Nikon デジタル一眼カメラ Nikon 1 (ニコンワン) V1 (ブイワン) 薄型レンズキット ブラックN1 V1ULK BKニコン1がかわいくてかわいくて、実際触ったらやっぱりとてもかわいかった。
 デザイナーに仕事させてる感じがする。日本有数のメーカーは日本有数のデザイナーを使ってるはずだが、いいと思えるものはたまにしか出てこない。マーケティングやらなんやら横から茶々が入って仕事させてもらえないんだろう。っていうか、そういう体勢が染みついていて、その枠の中でしか考えられなくなっているのかもしれない。

 こんなにかわいいのにニコン1のデザインは評判が悪いようだ。
 特にV1のファインダー部分の出っ張り。ここがチャームポイントなんだけどなあ。「どうにかならないの?」って茶々が入るとわかっていても、あえてシンプルに徹して、ブロックみたいなかわいさが出てる。なのに、わかってもらえない。残念。

 ニコンはFで亀倉雄策、F3でジウジアーロを起用し、デザインに力を入れてるようでいて、外側のお化粧としか考えてない節があった。ニコン1では珍しくデザインを機能とみなしている。新世代のカメラというコンセプトをかたちにして、「ニコンらしくない」という反応が出るのは成功した証拠ともいえる。この成功を厭がる人がいるのもしょうがないが。

 昔リコーが黒川雅之デザインのカプリオG3を出したときも受けが悪かった。まあ、これは売れないだろうと思ったし、その後GRDやCXで頑張って、受けてもいるんでよかった。

 フジのX100は自分の用途からすると非常に魅力的なんだけど、デザインが我慢ならない。フィルムのレンジファインダーと比べても悪い方だろう。ライカならフィルムカメラと操作性を統一することに意味もあるだろうが、突然出てきた新製品がこんな外観と操作性になる必然性がない。パチモン臭いレトロ風味にしてしまうと、せっかくの光学ファインダーの意味まで、実用じゃなくレトロ趣味に位置づけされてしまう。
 ところがこれが受けてるらしい。予想以上に女性ユーザーが多いらしい。
 ペンタックスQのデザインは、トイカメ風を意識したものだと思う。PEN EPシリーズのPEN F風もそうだが、なんとか風ってどうなんだ。ビレバンのセンスじゃないの。

 「デザインは好みの問題」とよく聞く。「いいけど好きじゃない」「ダメだけど好き」ってこともあるし、確かに好き嫌いは人からとやかく言われることじゃない。でも結構「売れるもの=良いもの」までいってしまってる。メーカーは売れなきゃ困るから、お客様の方が強い。それで、良かろうが悪かろうが大多数に受けて儲かる路線をとった結果、テレビ番組は今みたいになっちゃって、いきすぎた結果逆にそっぽ向かれたりもしてるわけで。ジャンル違うけど。
 送り手の「受ければいい」って態度は、客本位のようで客をバカにしてる。お客様は威張るより、専門家に矜持を持たせといた方が得すると思う。みんなの意見聞いて怒られないよう作ったら、おもしろいものになるわけない。

 そんでニコン1買うかとなると、中途半端だしお金あっても買わないけど、今後の展開には期待してるんで、これからも茶々に負けず頑張り続けてほしい。スペックやシステムが自分の用途に合って、欲しいと思ったときも、かわいく(またはかっこよく)あってほしい。

大人の科学・二眼レフ

大人の科学マガジン Vol.25(二眼レフカメラ) (Gakken Mook)大人の科学の二眼レフ買うた。これはかなりのキワモノ。下の写真を見てのとおり、極めて怪しい写り。レンズがプラスチック単玉だから一応シャープに写るのは中心部のみ。フィルム給走系は既存の安カメラを流用してるのかと思ったらそれ以下。巻き止めも二重露光防止機構もない。ピントノブを回してるつもりでフィルムをぐるぐる巻き上げちゃうミスを2回もやってしまった。ファインダーは見づらいしスクリーンはたわんでるし。不便で笑っちゃう。
 露出はF11、1/150秒固定。絞り板というパーツを外すと、シャープさは落ちるが暗所には強くなる。この状態のF値は不明。どうせちゃんと写らないなら、とことん怪しくていいやということで、絞り板は取り付けなかった。
 組み立てるのも楽しくて、本もなかなかおもろい。オシャレ寄りの部分は若干むかつくけど。あと、なんでカメラ知らないライターって“ぼける”を“ぼやける”って言い換えるんだろう。“ピンぼやけ”って言わないのに。
 それはともかく、35ミリの二眼レフ自体わりと珍しい。小っこくて可愛い。二眼レフも使ってみたいけど、ウチのフィルムスキャナは中判使えないし、今さらフィルムカメラ増やすのもな、と思ってたんでこれはホントにいいオモチャ。
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 以下、一眼レフ(OM-4+50/2マクロ)と撮り比べてみた。

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米谷美久氏・逝去

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オリンパス「ペン」「OM」「XA」の開発者、米谷美久氏が逝去
 
「オリンパス・ペン」の挑戦 (クラシックカメラ選書)■“まいたによしひさ”と読む。
 上はウチのカメラ棚。OM-1N、2、4Ti、PEN S、EE-3、XA2、米谷作品が並んでる(ちょっと関係ないのも混じってるが)。XA2は高校のときバイトして買った初めてのカメラ。
 米谷氏のポリシーは、既にあるならそれを使えばいいから、世の中にないものを作る、というもので、新機軸を連発した。
 あと、自分で使いたいものを作ってる感じがする。逆に言うと、自分で使う気にならないものを作らない。ここはこうなってるべきだとか、主張も強い。「俺はこれが正しいと思うから納得したヤツは買え」的な。マーケティングでみんなの意見を聞いた結果、みんなそこそこ納得するけどベストだと思ってる人がひとりもいないみたいな最近の製品の対極。日本のいち会社員でこれだけ“俺”を出した人もいないんじゃないか。
 OM-1は当初M-1という商品名で発売されたが、Mシリーズを出してるライカからクレームが来て、オリンパスのOが付いた。で、Mの方はというと米谷のM。公式には別の由来が説明されるらしいが、本人も自分のイニシャルだと言ってる。
 先端がダイヤモンドのペン(筆記具の方)を持ち歩いていて、サインを頼むと裏蓋のメモホルダーとかに書いてくれたそうだ。かっこいい。サインをねだられる開発者も珍しい。
 PEN(カメラの方)のデザインは当初、外部のインダストリアルデザイナーに頼んでいた。が、米谷氏はどうも気に入らない。上司に「これヤなんすけど」的な相談をすると「じゃあ、お前やれば」と言われて、以降デザインも自分でやってる。駆け出しの社員が先生のデザインにダメ出しして、ちゃんと結果出すんだから凄い。
 ヒーローでした。

一眼レフとはどういうものか

■「マイクロ一眼」オリンパス・ペンE-P1が出た。ミラーを省いて小さくしたとか書いてある。けど、ミラー取っちゃったら一眼レフじゃない。確かに一眼“レフ”とは言ってない。「一眼」だけなら間違いじゃない。言わんとすることもわかる。が、どーもやっぱり、もやもやとしたものは残る。
 ということで基本的すぎてあまり説明されない、一眼レフとは何か、ついでにレンジファインダーって、ライカって何かを、知ったかぶって解説してみた。
 やたら長いんで畳みます。

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FinePix F50fd

FUJIFILM デジタルカメラ FinePix (ファインピクス) F50fd シルバー 1200万画素 光学3倍ズーム FX-F50FDFinePix F50fd買った。出たときは文句言ったけど型落ちで1万5000になったからいいかと。アマゾンの写真貼ってるが、実際に買ったのは価格.comの比較で送料込み実質最安だったイートレンド。
 Lumix DMC-FX7からの買い換え。FX7はもともと電池の保ちが悪い上に、ちゃんと充電されないことがあったり、勝手に電源入ったり、信用できない感じ。
 F100fdも値頃感が出てきて、28ミリからのズームとダイナミックレンジ拡張が魅力だが、操作性悪いらしいんでやめた。
 他のもいろいろ検討したけど、サンプル画像の細部を見れば見るほど、どうでもよくなってくる。大した差はない。むしろ縮小したとき、発色や階調に不自然さが少ない方が重要。その点F50fdは良好に思えた。
 
 画素数だけ多くてもレンズとエンジンがヘボいとしょうがないが、dpreviewのテストだとPowerShot G9を超え、APS-Cの一眼に迫る勢い。実際に500万画素のFX7と撮り比べると、なるほど精細で階調も出てる。ただし、歴然と差を感じるってほどでもない。コンデジはコンデジ。総合的な画質は400万画素の時代に一定成熟して、それからあんまり進歩してない気がする。
 1200万画素を活かすには、手ブレにかなり気を付けなきゃいけない。少しでもブレたりボケたりすれば意味がなくなる。コンパクトはホールドしにくくブレやすい。のだが手ブレ補正があまり効かない。せいぜいシャッター1段分くらいか。この機種に限らず、コンパクトのCCDシフトは効きが悪いらしい。
 手ブレ補正をオンにすると「ダブル効果」で積極的に感度を上げてくる。感度を固定すればいいんだけど、明暗に合わせていちいち変えなきゃいけなくなる。FX7の場合は高感度画質が悪いからISO 100固定にしてたが、レンズ内手ブレ補正は2〜3段分効くんで問題なかった。同じ利便性をF50fdに求めると感度オートにしたくなる。そんで、感度が上がると描写が崩れて画素数多い意味がなくなる。
 
【伊達淳一のデジタルでいこう!】富士フイルム「FinePix F50fd」(試作機) 〜F31fdの真の後継機たり得るのか?
 6M記録ISO 400同士で比べると、F31fdの方が綺麗だ。やっぱF31fd買っとくべきだったかなあという気も。画素数増やせば感度が落ち、コンパクトにすれば電池の保ちが悪くなる。あちらを立てればこちらが立たず、一進一退少女隊。SDカード使えて、液晶見やすくなってるからまあいいか、みたいな。
 撮像素子のサイズが全然違うのに一眼レフとコンパクトの画素数が同じってのもバカに合わせた物作りで。1200万画素あればA4の350dpi出力ができるから、ここまではわからんでもないけど、既に1450万画素機が出ちゃってる。画素数は1200万で打ち止めにして、ISO 400で等倍鑑賞に耐える画質を目指してほしいなあ。カタログスペック的に訴求力は弱いんだろうが、特殊なニーズではなく誰にでもメリットがあると思うっていうか、コンパクトにこれ以上の解像度を求める方が特殊だと思うんだが。技術的ブレイクスルーがあって、感度が犠牲にならないなら別だけど。
 
■以下、購入を考えてる人向け、細かい話。

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エクシリム携帯 vs 単焦点エクシリム

■携帯変えた。カシオW61CA。前のモデルはエクシリム携帯と防水ワンセグの2本立てだったけど、1機種にまとまった。見た目も悪くないし、ペンギンと鰹のアニメーションが楽しい。サブディスプレイが付いてないのは不便。
 あらゆる電波の入りが悪いウチでは、やっぱワンセグ繋がり悪い。もうちょい映れば思った以上にいいなと思った。仕事部屋にテレビないから、見ても見んでもいいような番組を横っちょで表示してくれてると楽しい。仕事先でも『くちコミ★ジョニー』の辛酸なめ子が見れる。見てていいのかわからんが。
 
 4年前に出たカード型デジカメ、エクシリムEX-S20をまだ使ってる。200万画素、単焦点、固定焦点。ルミックスFX-7も持ってて、これも十分軽いがシャツのポケットに入れる気にはならない。常に持っているわけにはいかない。
 EX-S20は最近のデジカメと比べると画質がキツくて「どうせちゃんと写んないんだ」と思うと撮る気がなくなったりする。けど電池込み100グラム未満のデジカメはその後出てない。単焦点エクシリムの後継は携帯だろう。W61CAはエクシリムの代わりになるのか。
 
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 上はW61CAで撮った全景。クリックで元画像。
 下は左がエクシリムEX-S20、右がW61CA。
 エクシリムの方はピクセル等倍。W61CAは画素数が多いが、広角なぶん被写体が小さく写る。500万画素/FINEで撮ったものをちょっとだけ縮小して、被写体の大きさをエクシリムと大体揃えた。
 解像感はどっちもどっちって感じ。ってことは画素数増えた分精細になってるかというとそうでもない。精細に写ることもあれば、妙にのっぺりすることもある。JPEG圧縮率が高いせいかも。あと、見てのとおり彩度が高く飽和気味で、フォトショップで彩度を下げても階調が出ない。しかも昔の補色フィルター機みたいなクセがあって、これまたフォトショップの自動カラー調整では直らない。
 レスポンスや操作性も、携帯は携帯って感じ。画面を上向きに畳んでデジカメ状にすると、露出補正やマクロモードの切り替えができなくなる。レンズバリアも付いてない。
 W61CAにはUSBクレイドルが付いてるが、例によってMac非対応。けど、外部メモリ転送モードで、マイクロSDのデータはドライバなしで読める。ただし、アンマウントができない。マック側でアンマウントしても携帯側は接続を続けるんで、またマウントしてiPhotoが立ち上がってしまう。強制的に引っこ抜くしかない。まあ、問題ないと思うけど。ちなみに防水仕様のため、マイクロSDは電池を外さないと出し入れできないんで、SDカードリーダーを使うのは面倒くさい。
 常時持ち歩くカメラとしてはこれでいいような気もするが、やっぱエクシリムの「おっ!」と思ってから撮るまでの速さは捨てがたいなあ。
 オマケにエクシリムで撮ったフェチさんを。
 
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安原製作所回顧録

安原 伸『安原製作所回顧録』読んだ。
 ’97年から’04年まで存在した、世界最小のカメラメーカー、安原製作所の回顧録。特異な成り立ちは面白いし、フィルムカメラ終焉の記録にもなってる。
 
 安原製作所の1号機・安原一式が発表された’98年は、何年も続いた中古カメラブームのただ中だった。フィルムカメラの進歩は行くとこまで行っちゃって、最新一眼レフは合理的だけど、気分的にはレンジファインダーもいいよねみたいな懐古があった。リコーGRなどの高級コンパクトのレンズがLマウント(旧式ライカのレンズマウント)で発売されたり、安価なロシア製ライカコピーが面白がられたりしてた。
 安原一式はLマウントの実用機として登場した。金属製機械式レンジファインダーカメラ。メインストリームから見れば完全に時代に逆行しているが、趣味的にはトレンドを捉えていた。赤瀬川さんは「新品の中古カメラ」と呼んだ。35ミリレンジファインダーは高価なライカしかなかったが、安原一式なら5万5000円。ライカレンズを付ければ、写りはライカと同じ。クラシックカメラは安いのもあるけど、リスクがある。一式は新品が手に入り、メーカーサポートも受けられる。TTL測光の露出計も付いてる。機械式カメラを新規に日本で作ると高くなるが、製造を中国の工場に依頼することで安くした。今ならありそうな話だが、’98年の時点でこんなことする人はいなかった。一人で設計、開発過程はホームページ上で発表。店頭には置かず直販のみ。ネーミングも妙だし、何かと珍しかった。
 後にコシナがベッサシリーズでこのジャンルに参入してくる。大きなメーカーがライバルとなるとキツい。サイトにコシナに対する文句が書いてあることもあった。
 
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 一式のユーザーだったんで、個人的回顧を。上の写真は届いた日に撮ったもの。ゆうパックの箱が元箱。
 ’97年末にサイバーショット初代機、DSC-F1を買った。カメラには興味がなかったけど、電子機器としてのデジカメは面白かった。けど、新製品のカタログ見ても、電子部分はわかるがカメラ部分のスペックが理解できない。そもそも絞りとシャッタースピードの関係すら知らない。基本を知らないまま、どんどん便利になっちゃっていいのか?
 とか思ってたときに、たまたま読んだ赤瀬川原平『ちょっと触っていいですか―中古カメラのススメ』で古いカメラに興味を持った。今後デジタルに移行するだろうから、電子化が進んだフィルムカメラは中途半端な存在に思えた。どうせ買うならマニュアルフォーカスの方が魅力的。
 当時はまだニコンF3などのフラッグシップと、FM2などの普及機が新品で買えたけど、ロングセラーで生き残ってるだけ。俺の世代のカメラじゃない。欲しい種類のカメラは、もう新製品が出ない。
 そう思ってたのに出ちゃった一式は魅力的だった。受付開始後すぐに予約して、’99年6月にようやく届いた。
 中国製だけあって、作りは雑だった。表面の梨地の荒さがボディーの左右で違ってた。セルフタイマーが真っ直ぐ上を向かなかった。シャッターの具合がおかしくなって1度修理に出した。その後も快調とは言えなかった。ライカではファインダーの見えの良さが語られるが、一式のはレンズシャッターの普及機と同等以下。明るいところだと露出計が見にくかった。そんなんでも世界最小のカメラメーカーが作ってると思えば納得できた。
 ’04年、安原製作所のサイトに業務終了のお知らせが出た。うろ覚えだが、デジタルの進歩が予想以上に速かったから、とか書いてあった。お知らせ自体は事務的で、ユーザーに対するまともな挨拶はなく、会社畳むにあたって一句詠んであった。この一句がカチンと来たんだよなあ。会社なくなるってことはサポートが受けられなくなるってことで。「実用機」だから一式を買ったのに、話が違う。修理を必要とする精度なのに、とっととつぶれてもらっちゃ困る。俺はともかく手にしてから時間が経ってない人もいるだろう。会社畳む側はそれどころじゃなく大変かもしれんが、俳句なんか書いちゃって「やるこたやったよ、すがすがしいね」的気分を出されても。安原製作所は「頑固オヤジの店」みたいだった。客の側には「面白いヤツが面白いこと始めたな。いっちょ乗ってくか」的なとこがあったと思う。なのに「俺が勝手に始めて、勝手に終わる」って態度に出られちゃしょんぼりだ。物を買うときは1票投じるつもりでいるんで、この本に書いてある「メーカーを支える気持ち」もあったんだが、メーカーの方でユーザーに対する義理を欠いてるんじゃないか。一式は壊れる前に売った。
 そんなんで安原製作所をあまり良く思ってないんだが、2号機・秋月の失敗の下りを読んで、まあしゃあないかと思った。秋月はアンラッキーだが、一式はラッキーが重なって出たとこもあるんだな。