■カメ

  • 和名:スティンクポット / スティンクポットニオイガメ
       ミシシッピニオイガメ(ミシシッピーニオイガメ)
  • 英名:common musk turtle / stinkpot
  • 学名:Sternotherus odoratus(Kinosternon odoratum)
  • 分類:カメ目 潜顎亜目 スッポン上科 ドロガメ科 ドロガメ亜科 ニオイガメ属

 成長しても12センチ程度にしかならない(最大記録13.6センチ)。気の荒いニオイガメの中では例外的に穏和。紫外線要求量が少ない。丈夫。ペットショップで3000円前後('10年現在4000円前後)。
 体色は黒から褐色まで個体差がある。幼体の甲羅には3本のキールがあるが成長すると消え、滑らかなドーム状になる。
 臭腺を持ち、攻撃されると悪臭を放つのが名前の由来だが、飼育下では滅多に臭いを出さない。ニオイガメは「マスクタートル」とも呼ばれるが、「musk」の日本語読みは普通「ムスク」。麝香(ジャコウ)の意味で、仮面ではない。「麝香ガメ」という呼び名もある。

■生態

 北米大陸東岸の、カナダ南部からアメリカ南部まで広範囲に分布。止水または流れの弱い水場の、砂や泥または有機物が堆積した水底を持つ、水深60センチ以下の浅場に棲む。日中は物影や泥の中に隠れていて、朝夕に活動する。基本的に夜行性だが、気温が低いと日中行動する。また、飼育下では日中の行動に慣れる。
 肉食傾向の強い雑食性で、水生昆虫、貝、水生植物、甲殻類、動物の死骸などを食べている。水棲傾向が強く、産卵時以外陸に上がることは少ない。低温時の日光浴は通常ごく浅い水場で行う。
 オスは3〜7歳、メスは5〜11歳で成熟(飼育下では2年で成熟する場合がある)。オスは尾が太く、総排出孔が背甲の外に来る。また、オスの後ろ足にはパッチ状の鱗がある。産卵期は春から夏。水中で交尾し、陸上に浅い穴を掘り産卵する。寿命は野生で30年程度。動物園で54年生きた記録がある。

■飼い方

 ミドリガメは水中を泳ぎ、陸で甲羅干しするのに対し、スティンクポットは水底を歩き、あまり陸に上がらないなど違いがあるが、基本的な飼い方はミドリガメの飼育法が参考にできる。
 なお私は室内加温飼育で通し、繁殖させる予定がないので、冬眠・繁殖の方法については調べていない。

■エサ

 テトラ レプトミンキョーリン・ ひかりクレスト タートルなどの配合飼料をメインに与える。
 観賞魚用のエサには表示成分・原材料が同等のものがあるが、カメに必要なビタミン・ミネラルが足りない可能性がある。
 鶏肉、貝、魚などを与えると喜んで食べるが、栄養バランスが偏ったり、配合飼料を食べなくなる可能性があるので与え方に注意が必要。脂肪分の多いもの、ちくわなど塩分を含むものは与えない。
 エサは水中で食べる。子ガメは毎日、成体は1〜2日に一度、頭の大きさと同じくらいを目安に与える。食べるだけ与えてよいが、甲羅に引っ込めなくなるようなら太りすぎ。
 始めのうちは警戒してエサを食べないことがある。エサを入れたらしばらく水槽から離れて食べるのを待つ。配合飼料を食べない場合は冷凍アカムシなどに混ぜて与え、徐々に慣らす。

■ケージ

 子ガメの飼育はプラケースで始められる。60センチ水槽で繁殖も可能。衣装ケースなら安く済む。カメが挟まって出られなくなる隙間を作らないよう、水槽内のレイアウトに注意する。
 穏和で複数同居も可能(大きさの異なるもの・異種との同居は避ける)。しかし、繁殖以外は単独で飼う方が無難。ケンカをしなくてもストレスの原因になる上、水の汚れも早い。カメは単独行動する動物なので1匹でも寂しがることはない。

■水

 「スティンクポットは泳ぎが下手だから、浅い水深で飼わないとおぼれる」と言われることがあるが、実際はおぼれるほどヘタでもなく、上がりやすい浅場があれば背甲長(甲高ではない)の5倍でも大丈夫らしい。
 “甲羅が完全に浸り、かつ首を伸ばせば楽に呼吸できる水深” 〜 “甲長の3倍” の間が一般的なようだ。
 浮くエサをうまく食べられない場合は浅い水深から慣らす。
 特に水質にデリケートではないが、水棲傾向が強いぶん清潔さは重要。カメは魚より水を汚すので、頻繁な水換えが必要になる。フィルターなしの場合1〜2日ごとに、水槽と水温を合わせてから全交換する。フィルター使用時は状況によりいろいろだが、強力なものでも1週間程度で部分換水が必要。透明度が保てていても水質は悪化している場合があるので注意。エアレーション(ぶくぶく)は基本的に必要ない。
 魚と違い、カルキ抜きはしなくてもいいという説がある一方、子ガメの内は必要とか、ニオイガメには必要とかいう説もある。生物濾過を利用するならカルキ抜きが必須。抜くに越したことはない。

■シェルター

 水中にシェルター(隠れ場所)を置く。半分に割った植木鉢が一般的。

■陸場

 通常沼ガメ水槽には、煉瓦などの陸地にクリップライトを当てバスキング(甲羅干し)の場所を用意する。爬虫類用のバスキングランプも売られているが、電器屋で買える40〜60W程度のレフランプで十分。水槽内に気温計を付け、陸場が28〜35度になるようにライトの距離を調整する。夜は消灯する。
 一般にカメは体温調節と皮膚病予防のためバスキングが必須だが、スティンクポットは例外と考えてよい。バスキングを好む個体もいるが、基本的にはあまり陸に上がらない。むしろ、長時間陸に居続けるようなら飼育状況を一度疑ってみた方がいいかもしれない。息継ぎが困難なほど弱っていたり、水質・水温などの異常や、他のカメから受けるストレスで陸に逃げている場合がある。
 全く上陸しないなら陸場を設置しなくてもかまわない。ただし、複数同居の場合はエスケープゾーンとして陸場が有効。また、ケージ内の気温が極端に低くなるようなら空気の保温は必要になる。

■砂利

 自然環境に近くなる、緩やかな傾斜が作れる、石や流木などが安定する、光の反射がやわらぐなどのメリットはあるが、汚れが溜まるので使わない人が多い。ベアタンク(砂利や飾り付けのない水槽)ならメンテが楽。入れる場合は掃除の際、砂利も洗う。また、砂利を食べてしまい腸に詰まることがある。食べるようなら取り除く。

■ヒーター

 低温には強いが、冬眠させない場合はヒーターを入れ、水温を26度前後に保つ。冬眠は体力を使うため、子ガメには危険。冬眠には賛否両論ある。繁殖させる場合は冬眠または季節による温度差が必要。ヒーターにカメが直接触れると火傷するのでカバーを付ける。

  • サーモスタット内蔵のオートヒーターは、手軽で配線もすっきりする。
  • サーモスタットが別だと細かな温度調節ができる。ヒーターには寿命があるため、長い目で見れば別の方が経済的。フィルターなどで水流を作らないと加熱しすぎることがあるので注意。
  • 極端に水深が浅い場合はプレートヒーター(みどり商会・ピタリ適温など)を使う。

■温度計

 ヒーターの有無に関わらず水温計を付ける。バスキングスポットを設置する場合は陸場にも取り付け、気温を計る。

■照明・紫外線

 ビタミンD3を合成するため、UVB波長の紫外線を浴びることが必要。D3はカルシウムの吸収を助ける。経口摂取だけでは適量を取るのが難しく、UVBによる合成が望ましい。

  • UVA 400〜320nm (脱皮促進・食欲増進)
  • UVB 320〜280nm (ビタミンD3生成)
  • UVC 280〜100nm (有害)

 ガラスはUVAを透過するものの、UVBはほとんど透過しない。窓越しの日光には期待できない。
 屋内飼育ではUVBを出す爬虫類用蛍光灯(ポゴナクラブ・パワーUVBなど)を付ける。夜は消灯する。蛍光管の寿命は半年程度。明るく見えても紫外線照射量が減っている。UVBを出すと言っても太陽光に比べれば微量で、気休め程度という話も。
 屋外で日光浴させる場合は、温度の上がりすぎに注意。すだれ越しの光でも十分。日陰も用意して、自分で体温を調整できるようにする。日陰から出てこなくても、間接光がいくらかは当たる。
 以上はカメ一般の話だが、スティンクポットは紫外線要求量が少ないという。自然環境でも日中は物陰に隠れていて、あまり日に当たっていないと思われる。どの程度UVBが必要なのかよくわからない。定期的に外に出して日に当てた方がいいという意見もあれば、その必要はなく、むしろストレスになるという意見もある。「間接光が普通に入る室内なら何も気にしなくていい」という説まであるが、窓ガラス越しの間接光でいいというなら、UVBはほぼいらないということになる。実際はどうなのだろう。

■フィルター

 魚より水を汚すカメ水槽では、バクテリアによる生物濾過を効かせることが難しい。一方、魚ほど水質にデリケートではないので全量換水ができる。濾過に関する知識がないならフィルターは補助程度に考え、頻繁な水替えで水質を保つ方が無難で手っ取り早い。

  • 水中パワーフィルターが手軽で静か。(GEX・e〜ROKAなど)
  • 外部フィルターは高価だが、強力でほぼ無音。濾材全体に効率よく水が回り、水槽の上部を塞がない。(エーハイム・クラシックフィルター2213など)
  • 上部フィルターは水深が浅い場合、手を加えないと使えない。濾材へのアクセスが楽で、汚れの多い生き物に向く。容量の大きいものは濾過能力も高い。
  • 底面フィルターは砂利を敷かないと使えない。外部・上部フィルターと組み合わせて使うこともできる。能力は高いが、掃除が面倒でカメ水槽には向かないという人もいる。
  • エアポンプに繋ぐ投げ込み式フィルターを既に持っているのなら利用できる。新たに購入するなら水中パワーフィルターの方が良い。
  • スポンジが露出するフィルターはカメが誤食する可能性がある。
  • 極端に水深が浅い場合はフィルターが使えないので、エアストーンで水を動かす。

4年後追記('07/10/12)

 飼い始めて4年経ちました。このサイトには2年間の飼育記録を載せていますが、全部見るのはしんどいので、飼い方の手っ取り早い例として現在の環境を紹介します。基本的にはこのページと、最初の3ヵ月だけ見ればいいんじゃないかと思います。

■カメ

 甲長104ミリ、体重247グラム。ショップで見る成体の甲羅は、ゆで卵を半分に切ったような滑らかな場合が多いですが、ウチのは普通のカメっぽいというか、若干でこぼこしており、フチもうねっています。個体差なのか、出身地の差なのか。

■エサ

 レプトミン標準サイズを1日20個('12年からこういう経緯で、カメプロス沈下性を併用しています)。
 補助にキョーリン・ビタミン川エビを与えています。
 鶏肉、アサリを茹でたもの、刺身などをたまに与えています。刺身は脂肪分が多いのでおやつ程度。

■ケージ・水

 60センチガラス水槽。水深23センチほど。砂利は入れてません。塩素はテトラ・コントラコロラインで中和しています。

■シェルターなど

 レンガで浅場・シェルターを組んでいます。飼育9ヵ月目以降バスキングしなくなったので、陸場は撤去しました。
 スドーのプラスチック製シェルターも入れています。水と光を多少通すように、穴をぼこぼこ開けてあります。大きさ的にぎりぎりで、慌てているときは入り口で引っ掛かったりしています。そのくせ中で方向転換ができるようです。中で暴れるとガタンガタンうるさいです。
 昼間はシェルター内にいることが多く、夜寝るときは一番浅いところにいます。

■ヒーター

 100Wオートヒーターにカバーを付けています。

■照明・紫外線

 爬虫類用蛍光灯の2.0タイプを1灯。タイマー制御でオン・オフしています。
 冬以外は時々、窓を開けて部屋に日光を入れています(直射光ではありません)。ベランダに出しておくような日光浴はさせていません。

■フィルター

 外部フィルター、エーハイム エコ コンフォート2234を使用。ひとクラス上の2236にすればよかったかも。
 買い足したシャワーパイプを水面下に設置して、水上に斜め上に噴水し、水槽の壁に当てています。これで水流を抑え、酸素を取り込む機会を増やし(カメには必要ないが、濾過バクテリアに必要)、水面の油膜を撹拌しています。パイプは右側に少し傾けて、エサが浅場に流れるようにしています。キスゴム2つではカメに外されるので、3つで固定しています。
 吸水口にはスポンジプレフィルターを付け、水替えごとに飼育水で洗っています(その後スポンジをかじるようになり、新しく発売されたケース付のプレフィルター(pdf)に替えました。2段セットですが1段で使っています)。
 濾材は、1段目にパワーハウス・ハードタイプMサイズ、2段目に標準添付のサブストラットプロ レギュラー、3段目にさんみ濾過リング3S(生産中止)と、半分に薄くした細目パッドを入れています。パッドは純正ではなくダイカの互換品を使っています。1層目で整流とpHコントロール、2層目で球形による物理濾過と多孔質による生物濾過、3層目は小サイズのリングで単純な表面積を稼ぐ作戦ですが、自己満足です。
 カメが水を汚すと言っても、大型肉食魚を飼っている人もいるわけで、スティンクポット1匹程度なら生物濾過は可能です。外部フィルターは高価で複雑な印象がありますが、濾材も本体も寿命が長いので案外低コストです。エコのように呼び水機能と濾材コンテナがあれば、メインテナンス性も悪くないと思います。面倒なのはホースのコケ取りくらい。

■世話

 換水は4〜5日ごとにバケツ1杯分(12リットル・全水量の1/3)。週1回1/2換水でもいけますが、バケツ1杯で済ませたいのと、5日もすれば水が蒸発して足し水の必要が出てくるので。
 フィルターのホースにコケ(バクテリア?)が付くと流量が落ちてきます。そのタイミング(3ヵ月に1度くらい)で大掃除をして、水槽、ホース、用品類と、カメの甲羅のコケを落とします。生物濾過を行っていて全量換水はよろしくないので、バケツ1杯分の飼育水をバケツに取っておき、終了後に水槽に戻しています。
 水槽と甲羅の掃除にはメラミンスポンジを使っています。生き物にメラミンスポンジは強力すぎるようにも思えますが、試しに自分の爪周辺をこすってみると、問題ない感じです。歯ブラシでガシガシやるよりは優しく、短時間で済みます。大掃除は1時間ほどかかります。
 フィルター内の掃除も3ヵ月に1度くらい。水槽の丸洗いと時期をずらして行っています。それほど手間はかかりません。濾材コンテナをひとつずつ、バケツに取った飼育水に浸け、コンテナを揺すって軽くゴミを落とします。細目パッドはもみ洗し、必要なら交換します。

■書籍

ニオイガメ、ドロガメの医・食・住菅野宏文『ニオイガメ、ドロガメの医・食・住』

 ニオイガメ・ドロガメ専門の飼育書が出ました。内容が整理されておらず少々冗長ですが、今手に入るものの中では最も詳しく、参考になります。

カメの家庭医学小家山 仁『カメの家庭医学』

 カメの病気やケガが写真入りで紹介された怖い本。異常が起きたら獣医など専門家に任せるべきとし、治療法は書かれていません。飼い主にとっては予防と、早期発見の手引きになります。カメは丈夫なのでいい加減な飼い方でも長生きしたりしますが、上手くいかなかった場合にどんなことになるか思い知らされます。高価ですが見ておく価値があります。ちなみに私が持っているのは旧版の『カメディカ』です。

■オマケ