柏木ハルコ『失恋日記』

失恋日記 (Feelコミックス) 何度か書いてるけど、ヒトが自分の意思で動いてると思うのはわりと勘違いで、単に刺激に対して特定の反応を返している。人に自由意思などないと仏教は言ってるし、脳科学者の池谷裕二もそう言ってる(人まかせ)。
「物語」は単なる反応の結果を振り返って、意味があると思ったものをあとから結びつけてできあがる。
 
 フィクションではこの順番が転倒する。「物語」を描くから。
「こういう話が書きたい」という指針に沿ってキャラクターを動かす。これなら話はダイナミックでわかりやすくなるけど、薄っぺらくもなりがち。
 よく言う「キャラが勝手に走る」ってのも、主軸は変われど物語をドライブさせてることに変わりない。
 
 柏木ハルコは物語オタクな感じがする。「こういう話が書きたい」という意思は強いけども、話を作る過程で、ある状況下にあるキャラクターたちを配置すれば、どういう反応が起きるかっていうのを、もの凄くぐるぐるシミュレーションしてる気がする。物語にキャラクターを隷属させない。特殊な状況下でのキャラの反応の連鎖を緻密に考えたうえで、全体を貫く物語を一体化させてる。だから薄っぺらくならないし、フィクションのレベルがほかのマンガ家と違う。話のなかの現実がシビア。
 
 と、ここまで買う前に書いてたんだけども、読んでみたら最後の話が……。

 この本は短編集だから1話ごとの着想が重要で、長編とは話のでき方がちょっと違う。けども話の前にもあとにも話がある。やっぱり厚みがある。
 そんでこんな感想なんかアップしない方がいいかなと思っちゃうような、なんかもう、通して読んじゃうのがもったいないような感じで。
「おもしろかった!」とだけ言うのが一番いいんだろうけども。おもしろいです!

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