一眼レフとはどういうものか

■「マイクロ一眼」オリンパス・ペンE-P1が出た。ミラーを省いて小さくしたとか書いてある。けど、ミラー取っちゃったら一眼レフじゃない。確かに一眼“レフ”とは言ってない。「一眼」だけなら間違いじゃない。言わんとすることもわかる。が、どーもやっぱり、もやもやとしたものは残る。
 ということで基本的すぎてあまり説明されない、一眼レフとは何か、ついでにレンジファインダーって、ライカって何かを、知ったかぶって解説してみた。
 やたら長いんで畳みます。


 
■ファインダーの形式でフィルムカメラを分類すると、撮影レンズが結ぶ像を直接見れるものと、見られないものに別れる。まずは直接見る方。
 
0907_cam01_box.jpg カメラを自作することを考えてみる。遮光した箱にレンズを取り付け、焦点位置にフィルムをセットする。あとはシャッターをどうにかすれば撮影できる。けど、写る範囲も何もわからない。
 ちなみに絵は今どきヘタウマでかわいこぶってるわけじゃなく、ハンパな図を書くと不正確さが問題になるんで、いっそこんなにしてます。
 
0907_cam02_view.jpg■ビューカメラ
 フィルムの位置に磨りガラスを取り付ければ、レンズが結ぶ像がそのまま見られる。上下左右逆像。
 構図を決めピントを合わせたら、磨りガラスをどけて、フィルムカートリッジを取り付け、遮光板を引き抜けば撮影できる。
 単純だけど、大判カメラは今もこんなん。
 
0907_cam03_slr.jpg■一眼レフ
 ビューカメラは面倒くさいので、レンズとフィルムの間に鏡を置いて反射(reflex)し、フィルムと等価の位置に磨りガラスを取り付ける。見えるのは左右逆像。撮影時はミラーを上に倒し、ファインダーのフタにして遮光する。
 この形式のファインダーを持つカメラが「一眼レフ」。レンズが交換できるとか、性能が良いとか、写りが良いとか、一切関係なし。
 一眼レフはデカくて高価になるので、普通はそれに見合った性能になってるけど、フジカST-Fとその中国製コピー、長城PF-1みたいな特に優れたところのないレンズ固定のコンパクトカメラもある。これだって一眼レフ。
 
 ビューカメラより便利になったけど、ミラー付けただけじゃまだまだ面倒くさい。現在の一眼レフに至るまでいろんな機構が追加された。ミラーの上げ下げを手動でやらなくても一瞬で復帰するクイックリターンミラー、目の高さで上下左右正像が見られるペンタプリズム、それから自動絞り。
 自動絞りはちょっとややこしい。撮影レンズが結ぶ像をそのまま見てるんで、絞りを絞ればファインダーも暗くなってしまう。しかも絞ると被写界深度が深く(ピントが合って見える前後の範囲が広く)なるのでピントが合わせにくい。なのでファインダーを覗いてるときは絞りを開放にし、撮影前に目的の絞りに合わせ、次の撮影時にまた開放に戻さなくちゃいけない。これを勝手にやってくれるのが自動絞り。マニュアル時代の交換レンズにオートフォーカスでもないのに“AUTO”と書いてあるのは自動絞りのこと。今は当たり前なんで書いてない。
 この機構を備えた一眼レフでは、絞りを変えてもその時点では絞りは開放のままで、絞り値を予約してるだけ。シャッターを押した直後に絞り込まれる。絞りの効果をファインダーで確かめるには、プレビューボタンを押して実際に絞り込む必要がある。
 
0907_cam04_tlr.jpg■二眼レフ
 もろもろの機構の完成を待たず、手っ取り早くなんとかしちゃったのが二眼レフ。レンズをもう1個付けてファインダー用と撮影用を独立させた。ふたつのピントリングは連動して動くようになってる。これでいちいちミラー上げ下げしたり、絞りを開放に戻したりしなくていい。
 たまにフィルムのコンパクトカメラも、レンズとビューファインダーのふたつの眼があるから二眼レフだという人がいるけど、レフレックスファインダーじゃないので間違い。
 
     *     *     *
 
0907_cam01_box.jpg■もうひとつの、撮影レンズの像が見れないタイプ。
 まずは最初に戻る。暗箱にレンズとフィルム。写る範囲も何もわからない。
 
0907_cam05_viewf.jpg■ビューファインダーカメラ
 構図を決めるためにビューファインダーを取り付けた。これがビューファインダーカメラ。ピントはわからないんで、目測で合わせるか、固定焦点にしてしまう。『写ルンです』は固定焦点のビューファインダーカメラ。
 
0907_cam06_leica1.jpg 最初のライカもビューファインダーカメラだった。ピントは目測。被写体まで3メートルくらいかなーと思ったら、ピントリングを3メートルのとこに合わせる。可能なら実際に巻き尺で測ってもいい。
 
0907_cam07_leica1r.jpg■レンジファインダー
 アクセサリーとしてレンジファインダーが用意された。レンジファインダーとは距離計、距離を計る装置のこと。アクセサリーシューに取り付けて使う。
 
0907_cam08_rangef.jpg 距離計の仕組みはこんなん。2箇所の像をハーフミラーで合成する。違う場所から見てるので、像はズレて重なる。ミラーの角度を変えて像を一致させると、その回転角で距離がわかるようになってる。
 この距離計はカメラの上に乗っかってるだけで、本体とは全く連動してない。距離計を覗いて像が一致したとこでダイヤルの目盛りを見て、3メートル強と出てれば、自分でピントリングを3メートル強のとこに合わせる。それからビューファインダーを見ながら撮影する。面倒だし不正確。
 
0907_cam09_leica2.jpg■レンジファインダーカメラ
 その後、連動距離計が内蔵された。ピントリングを回すだけでピントが合わせられる。
 
 レンジファインダー(距離計)を持つビューファインダーカメラが、レンジファインダーカメラ。ジャンルとしてはビューファインダーカメラ>レンジファインダーカメラなんだけど、中古カメラ屋とかの大雑把な区分では、逆にビューファインダーカメラはレンジファインダーカメラの一種として扱われてる。
 
■ちなみにライカは一眼レフもコンパクトカメラも作ってるが、単に「ライカ」というときはレンジファインダーを指す。「俺、ライカ持ってんすよ」つって一眼レフを取り出したりしたら一瞬変な間が空いた後、「ああ、ライカRね」とか返されることになる。
 さらにちなんどくと、なんでライカが特別扱いされてるかというと、35ミリカメラの元祖にしてレンジファインダーの頂点だから。映画用の35ミリフィルムをパトローネ(カートリッジ)に入れて用い、映画の1コマは静止画には小さすぎるから2コマ分を1コマとしたのがライカ。しかも布幕フォーカルプレーンシャッターを組み込んで、使いやすくコンパクトにする設計をいきなり完成させてしまって、他社が追いつくのは難しかった。
 システムカメラとしては一眼レフの方が優れてるんで、クイックリターンミラーやら前述の機構が完成した後は、レンズ交換式レンジファインダーカメラは時代遅れでどこも作らなくなってしまった。それでもレンジファインダーにはファインダーの見え具合がいいとか、ミラーがないから作動音が静かでタイムラグが短いとか、広角に強いとかメリットがあったんで、頂点のライカだけが生き残った。作りのいい高級ブランドもの的な意味合いで続いてる部分も大きい。
 
■オートフォーカスのフィルムコンパクトカメラも、距離を測る装置を備えたビューファインダーカメラだけど、AFカメラはレンジファインダーカメラとは呼ばれない。
 かつて京セラが発売したコンタックスGシリーズは、レンズ交換式AFビューファインダーカメラだった。こういうカメラは他になかったんで、京セラは「AFレンジファインダー」というジャンル名を付けた。けどコンタックスGがレンジファインダーなら、他のAFコンパクトだってレンジファインダーになっちゃう。
 ペンE-P1が一眼を名乗るのは、これに似た感じがする。
 
■レンジファインダーは望遠や接写に弱いんで、ライカにはビゾフレックスというアクセサリーがあった。ミラーボックスとプリズムファインダーが付いたユニット。これを装着するとライカが一眼レフになる。
 ニコンFは一眼レフとして一から新規に設計されたものじゃなく、レンジファインダーのニコンSPにミラーボックスを付け足したものだ。
 ミラーボックスを付けて一眼レフにすればシステムカメラとしての自由度が上がるけど、カメラ本体は同じで、基本性能が変わるわけじゃない。一眼レフだから高性能ってことじゃない。
 画質の良し悪しも、フィルムカメラの場合レンズの性能で決まる。一般に一眼レフの写りがいいのは、レンズが高いから。
 
■背面液晶をファインダーとして使うデジカメは、撮影レンズが結ぶ像を直接見るタイプでビューカメラに近いが、アナログ時代の常識からかなり外れたものだ。同列には考えられない。
 パワーショットG10のように光学ビューファインダーを持つものはビューファインダーカメラになるし、ライカM8のようにレンジファインダーを持つデジカメはやっぱりレンジファインダー。デジタル一眼レフもライブビューを使わなければ、一眼レフ形式のファインダーを持つ歴とした一眼レフだ。
 
 オリンパスは過去に2/3インチCCDを使ったレンズ固定のデジタル一眼レフを発売していた。CAMEDIA C-1400Lとか。ファインダー形式としては間違いなく一眼レフだったが、性能面では他社のデジタル一眼レフとは別物で、高級コンパクトの範囲に収まるものだった。
「マイクロ一眼」ペンE-P1はこれと逆で、一眼レフ形式のファインダーがないから形式上は一眼レフではなく、オプションで用意されている光学ビューファインダーを取り付ければビューファインダーカメラだ。なのにカテゴリーは「一眼」になっている。
 パワーショットG10やリコーGRDのような高級コンパクトと比べ、E-P1はレンズ交換ができ、デジタル一眼レフと同じ大きな撮像素子を搭載していて、AF・AE・AWBの確かさや画像処理の能力も一眼レフに近いものになっている。AFに関しては、位相差AFが使えずコンパクトカメラと同様のコントラストAFを使うことになるので、一眼レフに比べ不利だが、それ以外の性能・機能は一眼レフと変わりない。そういうわけで、「一眼」を名乗っている。本来ファインダーの形式だけを示すはずの「一眼レフ」に、現在は撮像素子の大きさや画像処理の能力を示す意味が加わっている。
 ミラーを省けばバックフォーカス(レンズ後端から撮像面までの距離)を短くできるから、ボディーが薄くなるし、レンズ設計の自由度も増す。もともとフォーサーズはフランジバック(レンズマウントから撮像面までの距離)が撮像素子の大きさのわりに長すぎで、マイクロフォーサーズでようやくまともになった。
 
 繰り返しになるけど本来「一眼レフ」は単なるファインダーの形式で、性能が良いという意味はない。まあでも、一般に一眼レフは高性能・高画質だから、同等の機能を持つカメラを「一眼」と呼ぶのはわからんでもない。けど、ミラーとプリズムファインダーを省略して小型化したとか言われると、妙な気がする。批判する気はないんだけど、変な話だなあと。丼に入れず茶碗に入れて小型化した丼物とか、ヘルシーなラーメンとか、あら、うまく喩えれんわ。

4 thoughts on “一眼レフとはどういうものか

  1. よし判った!(本当かよ!)
    で、俺は何を買えば良いんだw
    まぁ用途にもよるけど。
    ちなみに5万円台ならこれ!とか10万超えるなら
    これ!ってあります?
    あぁ、けどほぼ初めてのデジカメ購入ってのを
    ふまえて。
    PS:エヴァ破見に行きました。14年ぶりに映画館行ったよw

  2. 機能的にはKissが無難だと思うよ。
    一眼レフは欲しくないってのもわかるんで、
    高級コンパクト的なものだと、センサーがデカいE-P1か、シグマDP-2か。
    センサー小さいのだと、パワーショットG10か、GRDか。
    性能は普通だけど、デザインはリコーCX-1がいいと思うな。
     
    カメラ詳しくない人にはキヤノンを勧める。
    AF、AE、AWBとかの基礎力がしっかりしてて、作りにクセがないので。
    よそのメーカーだと、どっかしら変なとこがあって、
    カメラ詳しい人なら、どこがどう変なのか分かった上で使えばいいけど、
    詳しくない人はわかんないんで、もやもやしたまま使い続けることになる。
     
    とか言いつつ、自分じゃキヤノン買わないけどね。
    そつがなさ過ぎて好きじゃないから。
    自分で買うとしたら、マイクロフォーサーズで次の機種が出るまで待つ。
    コンパクトもフジのF200の後継機種が出るまで待つ。
     
    俺も早く破に行かなきゃ!

  3. ミラーレス各社の一眼呼称、やはりどこか腑に落ちないですね。
    その点、ニコンはミラーレス機を一眼と呼ばないようで、
    このあたりは流石と言うしかないと思います。

  4. ニコン1は一眼からミラーを取ったものじゃなく
    別系統のカメラという位置づけみたいですね。
    デザインが凄くかわいくて欲しくなってしまいます。

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