江ぐち

小説 中華そば「江ぐち」江ぐち食いに三鷹行った。久しぶり。昼時は避けて行ったが、土曜だし5人待ち。知らない若い店員がいた。なんか前よりアットホームになってる感じがした。
 
 上京したての頃、三鷹の友達んちに遊びに行ったとき、江ぐちの暖簾が目に入った。「この江ぐちって、ガロに載ってたあの江ぐち?」と訊くと、「そうですよ。でもマズいですよ。地元の評判悪いです」。
 当時(’85年くらい)久住昌之がガロで連載してるエッセイに江ぐちのことを何度か書いてて、この店を知っていた。地元の久住昌之が「旨い」って書いてたのに変だなと思った。
 この時の三鷹の印象が良かったんで、翌年引っ越して、俺も三鷹住民となった。取りあえず、江ぐち食ってみた。なるほど「旨いラーメン」と言われて期待するのとはかなり違うものが出てくる。スープはわりと普通の東京風だけど、麺が独特で日本蕎麦みたい。っていうか、’06年現在でも五目そばが550円だから、本格的なものを期待しちゃいけない。旨いとも思わなかったが、マズいとも思わなかった。そんでまた行って、3回目くらいで旨いと思うようになった。「マズい」と言った友達に「慣れると旨いぞ」と伝えると、そいつも食うようになった。
 そのうち駅前再開発が始まって、頑固に立ち退きを拒否したタバコ屋が燃えたりして、再開発とは関係ないかもだが、ドクター・ペッパーを飲みながら手羽先食ったりしてた『ゲームセンター・にのたか』もなくなって、初めて来たときのいい印象は半分くらい消えちゃって、俺は別のとこに引っ越した。
 三鷹は特別な用がない限り行かないとこだから、引っ越しちゃうと江ぐちも食えず。たまに吉祥寺に行くとき、ひと駅移動して寄る程度。
 再開発が終わったばかりのとき行ってみたら、「確かに綺麗になったし、これはこれでいいのか」とも思ったが、今日行くと新しくできた施設も古びてきているアインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(=崩壊する新建築)な感じで、結局のところ魅力だけ失って何の意味もなかったように思った。
 
 住んでたアパートに行ってみたら、駐車場になってた。アパートまでの道が変な感じ。見覚えのない建物が実際に新しく建ったのか、単に忘れてるのか、はっきりしなくて混乱してくる。
 夢に具体的などこかが出てくることは少なくて、記憶から合成された夢独自の場所がほとんど。似たような景色が何度もでてくることもある。
 曖昧に知ってる景色と、知らないけどありがちな景色が混じってる状態が夢の中みたいだった。

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